小野登志郎(おの・としろう) ノンフィクションライター
1976年、福岡県生まれ。早大中退後、フリーのライターとして執筆活動を始める。在日中国人や暴力団、犯罪などについて取材し、月刊誌や週刊誌に記事を掲載している。著書に『龍宮城 歌舞伎町マフィア最新ファイル』『ドリーム・キャンパス』『アウトロー刑事の人に言えないテクニック』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
50代以上が4割以上と進む高齢化、更生させたうえでのセーフティーネットを
では今現在、このような反社会的存在が許されない時代においてなお、暴力団員になりたい人間、特に若い人はいるのでしょうか。聞いてみました。
「若いのはほとんど入ってこないね。昔は10代のやんちゃな子どもを行儀見習いとして部屋住みさせたりしていた。しかしいまは貴重な人材だな。シノギで使っていた若いやつを組の人間として扱ったりすることはあるけど、真正面からヤクザになりたいと入ってくる人間が少ない。この前ある組織に20代の若いもんが入ってきたが、やめられちゃ困るっていうんでそこの親分が直々に美味い飯を食わせに行ったり、面倒見たりして。昔では到底考えられない状況になっている。それくらい若いもんが入ってくるのは珍しくなっている」(某暴力団関係者)
若者の暴力団離れ。ブラック企業よりブラックな世界に入りたい者が減るのは、当たり前のことでしょう。
そのことと軌を一にしているのでしょう、暴力団員の高齢化もかなりの問題です。平成27年の警察白書によると、40~49歳の暴力団の構成員・準構成員の比率は30%以上、50~70歳以上では40%以上になっています。当時から現在にかけてもその傾向は進んでおり、暴力団の世界はすでに高齢化が決定的な状況にあると言って良いでしょう。
この数字を踏まえるならば、比較的若い暴力団員は、組織を辞めて、新しい生活を送ることができるかもしれません。しかし、高齢の暴力団員は、時代や社会の変化に適応できない、他にやることが出来ず、ただ仕方なく、暴力団を続けている、ということを見聞きします。
ほとんど60代以上しかいない組があることも聞きます。そんな組事務所に、大勢の警察官が押しかけ家宅捜索をしているテレビ映像を見ると、わたしには若い鍛え上げられた警察官が、年老いた暴力団員をいじめているのではないかと、錯覚することすらあります。
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