メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

羽生結弦の復帰と、女子表彰台独占の可能性は?

フィギュアスケート世界選手権(埼玉)プレビュー

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

羽生結弦拡大ケガから復帰する羽生結弦。前回のさいたまスーパーアリーナでの大会(2014年)では優勝している

 3月20日からさいたまスーパーアリーナで、フィギュアスケート2019年世界選手権が開催される。

 平昌オリンピックチャンピオン、羽生結弦が本大会で4カ月ぶりに試合に復帰してくる。11月のロステレコム杯(ロシア杯)の公式練習中、右足首の古傷を傷めた羽生。以来GP(グランプリ)ファイナル、全日本選手権と欠場して、公の場所にはいっさい顔を見せていない。

 だがコーチのブライアン・オーサーは米国テレビ局NBCスポーツの取材に答えて、「大丈夫。日本の試合に向けて集中している」と簡潔にコメントした。

 およそ1年前の平昌オリンピックでも、まったく同じような状況で大会本番に登場し、フィギュア男子史上66年ぶりとなった五輪2連覇を成し遂げた。今回もそのスーパーマンぶりを見せてくれるのだろうか。

羽生結弦に立ちはだかる宇野昌磨とネイサン・チェン

 その羽生の3度目のタイトルの前に立ちはだかるのは、全日本チャンピオン宇野昌磨と、全米チャンピオンで世界選手権タイトル保持者として出場するアメリカのネイサン・チェンである。

 宇野は2月に米カリフォルニア州のアナハイムで開催された2019年四大陸選手権でタイトルを手にしたとき、「世界選手権では優勝を狙いたい」と珍しくはっきり意思表示をした。全日本選手権の練習中に傷めた右足首をかばいながら、どこまで調整をしてこられたのかが焦点になる。

宇野昌磨拡大「世界選手権では優勝を狙いたい」と語った宇野昌磨。初優勝なるか

 一方、ネイサン・チェンは、昨年の秋にフルタイムの学生としてアメリカのアイビーリーグ、エール大学に入学。カリフォルニアにいるラファエル・アルトゥニアンコーチと連絡を取りながら、リンクで基本的に自主トレを重ねてきた。

 その状況で1月の全米選手権では、驚異的な演技を滑りきってISU(国際スケート連盟)非公認ではあるものの、総合342.22というとてつもないスコアを出した。もっとも、長期的には彼がこの先、学業と競技をどこまで両立させていけるのか、まだ未知数である。

 三者三様の事情を抱えている中で、王者の座を手にするのは誰だろうか。

 彼らのうちの誰かが崩れるような事態になれば、ボーヤン・ジン(中国)、ヴィンセント・ジョー(アメリカ)、チャ・ジュンファン(韓国)、ミハイル・コリアダ(ロシア)らが控えている。サプライズもあるかもしれない男子だ。


筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

田村明子の記事

もっと見る