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[27]誰一人、路頭に迷わせない東京をつくる

団体の枠を超えた「東京アンブレラ基金」設立へ

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

さまざまな属性の人たちの貧困が「可視化」

 「国内の貧困問題を可視化した」と言われた「年越し派遣村」から10年の歳月が経ったが、この10年間は、日本社会の中でさまざまな人たちの貧困が「発見」され、「可視化」されるプロセスであった。

 それまで貧困問題と言えば、中高年の路上生活者や若年の「ネットカフェ難民」など、単身男性の貧困が世間の注目を浴びていたが、この間、「子どもの貧困」、「母子家庭の貧困」、「貧困女子」、「下流老人」、「LGBTの貧困」等、これまであまり語られてこなかったさまざまな属性の人たちの貧困が語られるようになっていった。

 その背景には、それぞれの分野で困難を抱えた人を地道に支えてきた民間団体の活動がある。

それぞれの民間団体がホームレス状態の人を支援

 子ども、若者、女性、LGBT、外国人など、さまざまなカテゴリーで対人援助に取り組んでいる民間団体の数は、この間増え続けており、それぞれの支援において専門性を磨いてきている。また、以前から活動を続けてきた団体も、専門家と協力して貧困に着目した支援を行うようになってきている。

 この連載でも、そうした団体の活動をいくつか取り上げてきたが、それぞれの団体の支援現場の話を聞いてみると、「ホームレス支援」と銘打っていなくても実質的にホームレス状態にある人を支援しているケースが多いことに私は気づいた。

 例えば、女子高生を中心に十代の若者たちを支援している一般社団法人Colaboでは、虐待などの問題があるために家庭に居場所がなく、夜の街をさまよっている若者を一時保護するためのシェルターを開設している。

 昨年秋からは新宿や渋谷の繁華街にマイクロバスを停車させ、そこで食事提供や相談をおこなう「バスカフェ」の活動を始めており、「バスカフェ」での相談を通して、緊急の宿泊支援につなぐケースも出てきている。

 深夜の相談でシェルターへの移動が困難な場合は、近隣のホテルの部屋を確保して泊まってもらっているが、近年、都内のホテルの宿泊費が高騰しているため、その費用が負担になっているという。

 日本国内に逃れてきた難民を支援している認定NPO法人難民支援協会では、近年、難民申請中の外国人が十分な公的支援を受けられず、路上生活となってしまうケースが増えているため、他団体と連携して緊急の宿泊場所を提供したり、ホステル等での宿泊費用を支給したりするといった緊急支援を実施している。

 しかし、すべての人の宿泊先をすぐに確保できるわけではなく、資金的な問題もあるため、宿泊費用の支給については女性や未成年、病気を抱えている人など、特に脆弱性が高い人に限定せざるをえない状況だという。

 LGBTの生活困窮者を支援する「LGBTのハウジングファーストを考える会・東京」では、都内のアパートの部屋1室を確保して「LGBT支援ハウス」を開設。今年1月より、住まいを失ったLGBTの生活困窮者の受け入れを始めたばかりだが、シェルターが満室時も緊急支援を求める問い合わせが各方面から相次ぎ、対応に苦慮している。

 これらの団体において、緊急時のネットカフェ代、ホテル代等の支援は各団体の会計からの持ち出しになっており、それが財政への負担になっていた。


筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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