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薄利多売のAKB商法で誰が儲けているのか(下)

「会いに行けるアイドル」という発明、天才秋元康のビジネス手法は行き詰まるのか

杉浦由美子 ノンフィクションライター

拡大横浜スタジアムで握手会を行ったAKB48のメンバー=2011年5月29日、横浜市中区
 新潟を拠点に活動するNGT48の山口真帆(23)への暴行事件で高まるAKB48ビジネスへの批判。一記者として私は何年も前から「AKB商法は誰が得をしているのか?」と疑問に思っていた。前回はAKB関連の写真集やカレンダーは薄利多売でリスキーなビジネスだということについて書いた。

 今回は「会いにいけるアイドル」商法は、コストパフォーマンス的に、もう限界ではないかという点について言及していきたい。

天才は今でもファンの気持ちが分かる

 秋元康は天才である。天才というのはどういう人間をさすか。それは顧客と同じ感性を持つ人だ。通常、ビジネスにおいてはマーケティングをして、商品を作っていくが、天才はそれをせずに、自分が面白い、好きだと思ったものを提供し、大ヒットさせ、新しい市場を開拓する。秋元康も天才なので、自分が求めるアイドルをプロデュースし、それがアイドルファンに支持されてきた。その彼の最大の発明が「会いに行けるアイドル」であった。

 AKBグループのタレントは容貌的に普通の女の子がほとんどだ。それは整っているか否かだけではなく、華やぎの部分でもそうであろう。男性誌やスポーツ紙の記者たちは取材でAKBグループのアイドルたちに接する。彼らはこう話す。「アイドルよりもAV女優の方が可愛い」「奇麗なのは女優。アイドルは編集部のバイトの女の子たちと差がない」。

 ハッとするほどの美貌よりも、手に届く存在感が重要なのだろう。会いに行ける、手が届く、そういう女の子たちがアイドルとして求められる。秋元康は実感として、このトレンドを把握したのだろう。まさに天才である。

 感心するのは、秋元康は長年メディアの内部にいながら、この「会いたい」という感覚を把握したことだ。なぜなら、メディアの中にいると、この「会いたい」という感覚が分からなくなるのだ。メディアの中にいれば、どんなスターでも会えてしまう。これはこれで非常に辛い。幻想がなくなるからだ。

 男性誌の編集者も「女優の取材はしたくない。夢がなくなるから。キャリアウーマン役を素敵に演じていた女優が、実際は全く中身がないヤンキーだと分かってしまうと、もうドラマをみても楽しめなくなる」と話していた。 ・・・ログインして読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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