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民放AMラジオはもう自由にさせてあげよう

公共性、基幹性、非常時盤石の議論は別のプレイヤーに向けるべき

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

災害時におけるAM民放ラジオならではの役割はもうない

 要するにこれらは民放ラジオの話であり、報道機関の話でも公共放送の話でも災害対策の話でもない。それらが日本の「AMラジオ」において混在した議論がなされている。昨今のもろもろの災害時にAMラジオが役に立ったとは言うが、それはテレビやケータイ・スマホの補完に過ぎず、おそらく聴いていたラジオとはAMのNHKラジオ第1放送か、地元のコミュニティFMであった可能性が高い。すでに日本の大災害において緊急情報受信媒体は複数用意されており、現在のAM民放ラジオならではの役割はそこにはもうないし、なくても済む。

 AM民放ラジオの主たる収入はAM波の聴取率に基づく広告収入ではあるが、すでにインターネット配信「radiko」(ラジコ)の普及とともにインターネットブラウジングとの親和性と、音声メディアならではの「対話感」「親近感」「ストーリー感」によって広告収入は横ばい状態が続いており、民放ラジオをしぶとく生き残らせていることは、前述の拙稿でも述べてきたところだ。

FM波への「引っ越し」は自然な姿

 もちろん民放ラジオ各局にも報道の機能はあるが、民放が報道機能を持ち続けることの最大の意義は(これも複数の拙稿で繰り返し述べてきたとおり)「第四の権力」として公権力や強大な産業・民間の権力を監視し、社会の多様性健全性を確保する役割にある。迅速かつ正確な報道を災害時に確実に届ける役割は、少なくともAMラジオならNHKで十分(しかも民放よりもNHKの電波のほうが届きやすい)、むしろ必要なことは、多くのスマホやカーナビも含めてテレビ放送波が受信できること、そのスマホやカーナビからインターネット回線もつながること、それら(ラジオ・テレビ・ネット)が並列し補完して、被災者が自らを救う手掛かりになること、ではないのか。「基幹放送たるもの免許域内の全世帯に到達する電波網を整備すべし」と放送免許条件に定めているのなら、広域に届いても音質の良くないAM波を返上して、よりクリアに視聴できる(しかし電波の性質上到達エリアが狭くなる)FM波への「引っ越し」を願い出るのは、自然な姿と言える。

 国土強靭化の一環として政府が主導し民放がお付き合いで乗りNHKが静観した「ワイドFM」について、

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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