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「多数精鋭」の五輪代表争い

金メダル候補の陸上男子50㌔競歩、日本選手権は超ハイレベルの戦いに

増島みどり スポーツライター

世界記録保持者の「新人」が日本新で優勝

拡大日本選手権50キロ競歩で日本記録を樹立して優勝した鈴木雄介(富士通)
 今年10月のドーハ世界陸上選考会を兼ねて、4月14日に石川県・輪島で行われた50㌔競歩の日本選手権は超ハイレベルでの戦いとなった。

 世界陸上代表のうちすでに2枠は決定済みのため、残るは1枠。2016年リオデジャネイロ五輪で初の五輪メダル(銅)を獲得した荒井広宙(ひろおき、4月から富士通に移籍)、17年ロンドン世界陸上銅メダリストの小林快(こばやし・かい、4月から新潟アルビレックスランニングクラブに移籍)、世界競歩チーム選手権のメンバーとして金メダルを獲得した丸尾知司(愛知製鋼)ら「50㌔のスペシャリスト」のうち誰がその座を射止めるか、と予想された。

 競歩はいまや、日本陸上競技連盟で「ゴールドターゲット」に成長し、来年の東京五輪で金メダルが期待される種目として順調に強化を進めている。ドーハ世界陸上代表選考を前に、五輪、世界陸上、国際大会のメダリストたちさえも残り1枠を争わなくてはならないほどだ。男女オリンピック強化を担当する今村文男コーチ(富士通)はこうした嬉しい悲鳴にも似た状況を以前「少数精鋭ではなくて多数精鋭」と表現していたが、日本選手権では精鋭がさらに加わる、意外な展開となった。

 20㌔競歩で世界記録(1時間16分36秒)を持つスピードのスペシャリスト・鈴木雄介(31=富士通)は「お試し的に、まずは完歩を狙っていた」と、過去2回はトレーニングの一環で棄権を前提に出場した50㌔に3度目の挑戦をし、初の完歩をするつもりだったという。チャレンジャーは、50㌔の専門家たちとは異次元の、20㌔のスピード感覚をそのまま50㌔に持ち込んでレースを展開。20㌔の選手には50㌔を歩き切るスタミナはないと思われ、誰もが鈴木の脱落を予想するなか、後半、ペースの上がらない50㌔勢を引き離しにかかる。40㌔手前からは一人旅でもペースは落とさず、3時間39分7秒の日本新記録でついにゴールテープを切ってしまった。

 お試しどころか、ドーハ世界陸上にすでに内定している前・日本記録保持者の野田明宏(自衛隊)の記録を一気に40秒も更新し、しかも歩型違反もなく世界陸上残り1枠の内定条件をクリア。2位の川野将虎(かわの・まさとら、東洋大)も20㌔の学生記録を持つオールラウンダーで、鈴木相手に最後まで粘って3時間39分24秒の50㌔学生新記録と日本歴代2位の好記録をマークし、一気に東京五輪候補に名乗りを上げた。

 35㌔過ぎで足裏のマメをつぶして棄権したものの、レースをスタートから単独でリードしたのも、20㌔でリオ五輪7位の松永大介(富士通)だった。50㌔のレースを、20㌔の選手たちがリードしフィニッシュまでする展開は、日本競歩界のレベル、層の厚さを違った形で示し、スタミナ重視の50㌔には「スピード」の衝撃を与えるものだった。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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