メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「女子は勉強しないでいい」というトレンド(下)

スクールカーストが「本当の頭の良さ」を育てる

杉浦由美子 ノンフィクションライター

拡大保護者や塾関係者の見送りを受け、試験会場に向かう私立中学の受験生=2019年2月1日

 2019年中学受験の結果を見ながら、女子教育のトレンドに言及している。なぜ、女子に特化するかといえば、男子は変わり映えしないからだ。東大や国立医学部に直結した難関校開成、麻布、武蔵の偏差値がトップ3で、その下に早稲田や慶応の付属校がくる。しかし、女子の場合は変化かある。去年、2月1日受験日の偏差値で桜蔭と渋谷学園渋谷が並んだ。女子難関校と共学進学校である。単純に学力だけを伸ばすならば、桜蔭は最強である。しかし、将来は医者になりたいと考えるような女子も、お洒落な制服や共学といった環境を選ぶ傾向が強くなったと分かる。そして、今年、2月1日受験日で桜蔭と並んだのは早稲田実業である。大半の学生が早稲田大学に進学する付属校だ。それ以外にも慶応中等部や青学といった付属校も人気が高まっている。なぜか。ひとつには先が見えない大学入試改革に向けて、不安感があるために、中学受験で大学への進学を決めてしまおうという希望だ。だが、それだけではない。もっと先を見つめて、付属校を選ぶ受験生が増えているのではないか。

ベストセラー『頭に来てもアホと戦うな!』での指摘

 1990年代に女子の4年生大学への進学率が高まった。理由は単純で、女子の採用の中心が短大卒から4年制卒にシフトしたからだ。2000年代に入ると学歴だけではなく学力が重視されるようになり、それに連動して、中学受験でも、付属校の人気が落ち、進学校の偏差値が高まった。その象徴が豊島岡や吉祥女子、洗足といった無宗教の女子進学校だ。キャリア教育をかかげ、リベラルな校風が売りだった。男女別学は異性の目がないので、ガリ勉をするのに適した環境である。特に女子は人目を気にする傾向があるから、女子校に入れることは学力を伸ばすにはいい。

 だが、学力の高さが求められる作業は、今後、AIが代行していくようになる。そのため、弁護士、医師、薬剤師といった専門職も将来的には今ほど人数はいらなくなる。しかし、専門職はなくならないし、生き残った人たちは安定や高い収入を維持できるだろう。

 専門職の業務でも、AIが出来ない部分はあり、それをやるためには人間が必要だからだ。では、AIが出来ない作業とはなにか。

 75万部発行のベストセラー『頭に来てもアホと戦うな!』(田村耕太郎・朝日新聞出版)の中で、本当の頭のよさとして、「相手の気持ちを見抜く力」と書かれている。そして、従来型のエリートでこの能力がないので挫折する人間が多いとも述べている。ベストセラーとは、読者に共感される本である。この田村の主張と同じことを多くの人たちが感じ、「相手の気持ちを見抜く力」が必要だと考えているのだろう。そして、そのためには共学の付属校がいいと考える保護者や受験生が多いのではないか。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

杉浦由美子の記事

もっと見る