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日本のバレエダンサー教育に変化の可能性

日本のバレエダンサー教育に変化の可能性

菘あつこ フリージャーナリスト

「バレエアカデミー」の様子(名古屋市芸術創造センター提供)

 英国ロイヤルバレエ団の高田茜さんや平野亮一さん、ウィーン国立バレエ団の橋本清香さんと木本全優さん、マリインスキー・バレエの永久メイさん――などなど――挙げればキリがないほど、今、日本人ダンサーは世界中の主要バレエ団でプリンシパル(最高位ダンサー)にのぼりつめるなど、大活躍している。私は「SWAN MAGAZINE」(平凡社発行)というバレエ誌で「世界の劇場から、こんにちは!」という日本人で海外でプロとして活躍するダンサーを紹介する記事を連載させていただいているが、紹介する候補が尽きることはなく、どんどん増えて到底紹介しきれないように思えてくるほどだ。

公立の「バレエ学校」で育つ、欧州やロシアのダンサー

 彼ら彼女らは、ヨーロッパやロシアといったバレエの本場と言える国々で育ったダンサーたちとも比較された上で、昇進したり、大役に抜擢されたりしているわけだが、受けて来たバレエ教育のシステムは、日本とそれらの国では随分違う。その中でも国によって多少の違いはあるが、ヨーロッパやロシアには、10歳くらいから18歳くらいまで、才能のあるダンサーを選んで、プロになるための専門教育を行う“バレエ学校”というものがある。

 大抵は国立や州立などの公立。バレエにあまり馴染みのない方でも聞いたことがあるだろう「パリ・オペラ座バレエ学校」や「ボリショイ・バレエ学校」、「ワガノワ・バレエ学校」などがそれだ。数十倍の競争率で選ばれた生徒たちが、入学後も才能がないとなれば退学、という厳しいシステムの中、磨かれていくドキュメンタリー等が印象に残っている方もいらっしゃるだろう。そういったバレエ学校は、アジアでも共産主義時代にソ連の影響が大きかった中国などにはあり、必ずしもヨーロッパやロシアだけのものではない。

個人経営の教室で学ぶ場合が多い日本

 だが、日本人ダンサーは(途中からは留学して同様の教育を受けた人も多いものの)、まったく違うバレエ教育の中で育っている。基本的に、街にあるバレエ教室で月謝を払って教わる形だ。大きなバレエ団の系列の場合もあれば、個人的な教室の場合もある(もちろん、ヨーロッパやロシアでも幼児の段階でスタートする折は、そんな教室に通うことも多いが、才能や可能性が感じられる生徒には、10歳頃に専門教育への道が開かれる)。個人経営などの街のバレエ教室という形で世界に通用するバレエダンサーを育てていらっしゃる日本のバレエの先生方には本当に頭が下がる。勉強熱心な方が多く、海外で指導のための研修を積極的に受けられている方も多い。また、最近は、海外でダンサーとして活躍後、日本で後進の指導にあたる方も増えてきて、それも頼もしいと思う。

 けれど、身近に見て、いつも悲しいと思うのは、この日本の状況では、どんなに才能ややる気、可能性があっても、月謝や発表会費用などを負担できる家庭に生まれていなければ、バレエを続けるのが難しいということ。芸術ジャンルによっては、

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