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写真家・岩根愛の旅(下)福島の変化を撮り続ける

ハワイと福島への12年の旅を綴った『キプカへの旅』

臺宏士 フリーランス・ライター

5年かかったパノラマ撮影

 「盆唄」の中で岩根さんが使用したカメラ「サーカット」は、マウイ島にある写真館「ナガミネ・フォトスタジオ」(1931年創業)から借り受けたものだ。

 ようやく出会ったカメラに岩根さんは思わず、「売って下さい」と切り出していたという。創業者の孫、リック・ナガミネさんがいまの経営者だ。彼には「祖父の大切な思い出だから」とすぐに断られたが、リックさんは粋だった。

 「写真が撮れたら持ってきてね。いつか写真展をやってね」

 この二つの口約束だけで借用書も交わさず、快く貸し出してくれたという。期限も決めぬままに。
日本に持ち帰り、全く動かなかったものを福島県三春町の時計職人らの手を借りて現役復帰にこぎつけた。

 2013年。ひと夏をかけて三春町内で行われるすべての盆踊りを撮影した。これが縁で、廃校になった同町の旧町立桜中学の施設を利用できるようになった。パノラマ撮影用の2メートルにも及ぶ長いフイルムを現像するには特別な設備が欠かせなかったのだ。給食室は暗室になった。この時から岩根さんの写真家としての活動拠点の一つに三春町が加わった。

 東日本大震災のあと、三春町には富岡、葛尾町から避難してきた人が多くいた。その人たちの一時帰宅に同行し、自宅や農地を背にしたサーカットによるパノラマ写真の撮影を始めた。2013年10月のことだ。

 ところが、初日から躓いた。

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筆者

臺宏士

臺宏士(だい・ひろし) フリーランス・ライター

毎日新聞記者をへて現在、メディア総合研究所の研究誌『放送レポート』編集委員。著書に『アベノメディアに抗う』『検証アベノメディア 安倍政権のマスコミ支配』『危ない住基ネット』『個人情報保護法の狙い』。共著に『エロスと「わいせつ」のあいだ 表現と規制の戦後攻防史』『フェイクと憎悪 歪むメディアと民主主義』など。 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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