先生が足りない! 教育現場の悲鳴
公立学校の先生のお仕事は、みんなが考えるよりも、ずっとずっと難しい
佐久間亜紀 慶應義塾大学教授

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「うちの学校では講師の先生がみつからず、教員一人一人に割り振られる仕事が増えて、もう大変です」
「講師がみつからなかったので、教頭先生が〇年〇組の担任になりました」
「『申し訳ないけど、先生がみつからなかった。足りない先生の分をふんばってほしい』と校長から訓話があった数日後に、30代の先生が勤務できなくなってしまいました。鬱病だそうです」
「もう教育委員会はあてにならない、だれか講師をやれそうな知り合いはいないか、って朝会で校長先生がおっしゃったんですけど、そんな人知ってたら、とっくに報告してますよね」
新学期が始まって一ヶ月。いま、あちこちの学校現場で、先生がみつからないという悲鳴にも似た声があがっている。
いったいなぜ、こんな事態になってしまったのか。
まずは、教員不足の実態やその規模を確認することから始めよう。
どれくらい先生が不足しているのか
この数年、5月になると、教員が足りないというニュースが流れるようになった。
毎年、教員不足の数は、5月1日の調査で確定値が出る。
公立学校の先生の数は、新学期が始まるときに、その時点での子どもの数と学級の数で仮決定され、子どもの出入りが落ち着いてきた頃の、5月1日付の児童生徒数と学級数で、最終的に決定されるからだ。
今年は連休明けの5月7日に確定値が決まる前からすでに教員不足のニュースが流れている。たとえば、NHK富山によれば、富山市では、始業式を迎えても担任が埋まらないなど、小学校9校で13人、中学校10校で14人、合計27人の教員が不足しているという(「産休や育休などで教員不足 担任決まらない学校も 富山」)。
昨年までの状況をみてみると、NHKの2017年4月の調査によれば、全国47都道府県と20政令指定都市のうち、32の自治体で717人が不足していたという(NHKおはよう日本「小中学校で先生が足りない理由」2017年7月4日)。
また、共同通信の2018年5月の調査によれば、35自治体で少なくとも600人が不足していたことがわかったという(共同通信「全国で教員不足600人超」2018年7月1日)。
たとえば、広島県教育委員会は2018年5月に、県内公立小中学校35校で、教員38人が欠員となっており、その内訳は臨時採用教員26人、非常勤講師12人と公表した。
呉市立の中学校では、2年生の理科と1年生の国語で、非常勤講師が見つからず、4月分の授業を実施できなかったという。
ただし、これらの調査でも、メディアの取材に対して、足りない人数は公表しないと回答した自治体があるため、不足数は確実にこの数を上回っているといえる。