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それでも先生になりたい アルバイト教師の実態

収入は正規よりずっと低いのに、きつい仕事ばかり回ってくる。これでも同じ「先生」か

佐久間亜紀 慶應義塾大学教授

「臨時」のはずが「常時」いる

 ところが、2001年以降、急増した非正規雇用の形態がある。それが「臨採」だ。

 最長1年間の任期付き採用だが、フルタイム(週40時間)の常勤で、学級担任や部活指導を任されたりする。

 「臨時的」に任用される先生が、学校現場に「常時」いることになったのである。

 仕事内容は、産休・育休代替教員のように、正規雇用の先生一人分の仕事を、ほとんど全部こなすことが期待されている。子どもや保護者からすれば、どの先生が正規雇用で誰がそうでないかは、すぐには見分けがつかない。

 でも、正規雇用ではないから、初任者研修もなければ、指導してくれる教員もつかない。それでも、いきなり授業ばかりか、学級担任までもたされた上、運動会や学芸会などの行事、委員会や部活など課外活動など子どもに対する教育活動はもちろん、保護者会など親への対応から、学校内のさまざまな業務の分担などを、立派にこなさなければならない。

 子どもからすれば、どの先生が非正規か、なんて関係ない。全力で、甘えたり、ぶつかったりしてくる。

 ひとたび教壇にたてばみんな同じ先生だ。

 保護者からしても、担任の雇用形態など知ったことではない。非正規雇用だろうが、ちゃんとやってくれなければ困る。

 だから臨採の先生たちはみんな、必死で頑張っている。でも、年収は、同じ歳の正規の先生の5~6割くらいにしかならない。

 まったく割にあわない待遇なのである。

拡大maroke/shutterstock.com

それでも先生になりたい

 それでも、教員志望の学生たちは、もしも教員採用試験に受からなかったら、「臨採」の募集を求めて、教育委員会の名簿に登録を希望する。

 教員志望の若者からすれば、別の業種のアルバイトをするよりも、つきたい仕事なので働きがいを感じられるし、教員としての知識や技術を磨く下積みの経験になるからだ。

 しかも、「臨採」の経験があると、教員採用試験の時に有利になる可能性もある。多くの自治体では、一次の筆記試験が免除になったりするし、面接時にも実際の経験を踏まえた具体的な話をしやすいので、現役大学生より高得点をとりやすい。

 うまくいって臨採教員として頑張っている姿を校長から評価してもらえれば、採用後の配属で有利になる可能性もある。教員採用試験に合格した時に、慣れた学校で初任としてのキャリアを始められたりする場合もある。

 だから、多くの大学教員は、臨採教員の待遇の悪さは承知しつつも、「教員採用試験に合格するまで、なんとか無事に走り抜けて!」と祈るような気持ちで、毎春、学生を送り出してきた。

 ところが、この数年の臨採教員の働かされ方は、学生の下積み経験とか、学生と教育委員会のギブ・アンド・テイクの域をはるかに超えるような、異常なものになっているようにみえる。

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筆者

佐久間亜紀

佐久間亜紀(さくま・あき) 慶應義塾大学教授

1968年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学後、博士(教育学)。東京学芸大学准教授などを経て、現職。専門は、教育方法学、教師教育、専門職論。教師の力量形成の方法やその歴史を、日米比較やジェンダーの視点から研究するとともに、実際に各地の学校現場で、教師達と共に授業づくりに取り組んでいる。授業研究会「第三土曜の会」主宰。主著に『アメリカ教師教育史』(東京大学出版会、2017年、第13回平塚らいてう賞受賞)、共編著『現代の教師論』(ミネルヴァ書房、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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