メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

親を悩ます「PTA問題」 前川喜平さんに聞いた

前文科省事務次官が考えるPTAの実態と学校・地域との関係とは

前川喜平 元文科省事務次官 現代教育行政研究会代表 

PTAのマンパワーに依存する日本の学校

――学校もPTAを「学校の財布」とあてにしているようなところがあるのですが、どこがかわればいいのでしょうか。

前川 文科省は、「地域学校協働活動」をうたい、地域住民から学校ボランティアを募ろうといっているが、もともとのマンパワーが少ないんだから、正面から学校職員を増やしていかないといけない。教職員だけでなく、学校司書とか部活動やICTの支援員とか。

 日本の学校は、世界的にみて教員の比率が極めて高い。スタッフの8割が教員。あと2割が事務職、栄養士とか。欧米だと6割が教員で、教員以外の専門職やサポート職が4割。逆に言うと、日本の先生は、本来の授業以外の役割を抱え込まされている。だから先生は忙しい。学校という組織を回していくために、本来いなきゃいけないスタッフがいないからです。その人手不足分を、PTAのマンパワーに依存しているところもあるんだろうなと思いますね。

 あと日本の場合は、保護者負担ではない形での地域との連携を進めるべきだと思う。時間のある高齢者はけっこういるはずなので、もっと学校に関わってもらったらいいと思うんですけどね。

――それはいいですね。ただ、「地域」といっても、ボランティアやNPOが誰でも好きなように学校に入れるとなると、懸念もあります。実際、私の子どもの通う公立小学校は2018年に「江戸しぐさ」をNPOから習って、全校で学習していました。

前川 「江戸しぐさ」をまだやってるんですか! あれはやめた方がいいですよ。江戸しぐさは、文科省が作った道徳教材の中に入れちゃったの。あれはねえ、大失敗。僕が初等中等局長のとき、下村さん(下村博文・元文科相)に言われて作った。あんなインチキなものを伝統的な道徳だって思い込んで学校の教材にしてしまったことは、悔やんでも悔やみきれないです。

地域に学校を開くとき、試される自治力

――共働きの家庭も多く、情報を選別する余裕はない。そういうなかで、もし地域に学校が開かれたりすると、子どもたちや母親を教育しようとする人たちが入ってきて、そっちにひっぱられかねない。地域に広げるってことは、良さそうに聞こえるけれど危なくないですか?

前川 それはもう、「日本の民主主義が危ない、自治も危ない」って言ってるようなものですね。実際、危ういと思うけれど。政府のプロパガンダに洗脳されているような人たちが多い。

 結局、地方政治がそうなっているってことですね。本来、学校や教育は、自治的な営みであるべきなんです。国の学習指導要領というような大枠は確かにあるし、学校の施設とか設備とか教員の配置など一定の基準は国が作っているけれど、文科省の指示のもとで動くのではなく、学校教育は本来的に地方の仕事なんです。学校が教員の独占物になってはいけなくて、住民の自治に支えられた存在でなければならない。

 学校で何が行われているかは、保護者に限らず住民がもっと関心をもっていなければならない。そのために教育委員会制度やコミュニティスクール制度があるわけだけれど、実際は無関心な人たちが多く、一部の人に牛耳られたりすることが起きている。PTAも同じ。結局、それは日本の政治そのものが、一部の人に牛耳られているということでもあります。

拡大 takasu/shutterstock.com

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


関連記事

筆者

前川喜平

前川喜平(まえかわ・きへい) 元文科省事務次官 現代教育行政研究会代表 

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部官僚トップの文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。加計問題では「総理のご意向」文書などについて証言。現在は自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。現代教育行政研究会代表。