親を悩ます「PTA問題」 前川喜平さんに聞いた
前文科省事務次官が考えるPTAの実態と学校・地域との関係とは
前川喜平 元文科省事務次官 現代教育行政研究会代表
PTAと文科省との関係は
――これまで、PTAに入らないと登校班を外されるとか、卒業式のまんじゅうをもらえないとか、そういうのは文科省で議論になったことがありますか? 文科省の中で、この苦しみはどのぐらい理解されているんでしょうか。
前川 省内で聞いたことはないが、省外では聞いていた。学校現場に行ったときに「PTAをなんとかしてほしい」と言われたり、妻から直接、役員を選ぶのに困ったとかいう話を聞いたりしていた。自らPTAに飛び込んでいった文科省の職員もいるけれど、それを売り物にしているようなところもあって……。
省内の議論の動きは、僕のいる間にはなかったですね。ぜひやったらいいと思う。僕自身は直接、生涯学習政策局の仕事したことはなかったので。学校教育以外では永田町とかかわる仕事が多かった。ひどい仕事だったけど。
――一方で、PTAに文科省が直接、手を突っ込んだら危ないことにもなり得ます。

前川喜平さん
前川 文科省は、脱退の自由、非加入の自由があるということはちゃんと知らせるべきだと思いますよ。
学校の図書とかクーラーとかは、本来、自治体が予算化しなければいけない。必要な財源措置は、交付税の中に入っていますよ。各市町村で図書を整備するお金は持っているはずです。空調も国の補助金はあるし、本来、設置者がやらないといけない。そんなもののためにPTAのお金が使われることはあってはならない。
公会計の学校予算と、私会計のPTA会費をごっちゃにすることは、公会計としてあってはならないことなので、おかしいと正面から言えるはず。「そんなものにどうしてPTA会費を使うんですか」と。そもそも、本来的なPTAの活動だけなら、それほどたくさんのお金はいらないはずです。
――文科省も、PTAの運営については、正面からおかしいと言えるはずだ、ということですよね。
前川 いえます。それは(改革というより)歪んだものを元に戻す正常化。公会計の区別とか、加入・脱退の任意性とかは当然のことです。正常な姿に戻れ、という主張になるわけですよね。