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親を悩ます「PTA問題」 前川喜平さんに聞いた

前文科省事務次官が考えるPTAの実態と学校・地域との関係とは

前川喜平 元文科省事務次官 現代教育行政研究会代表 

PTAには日本の病理みたいなものがつまっている

――入退会は自由といっても、実質強制入会。非会員の保護者の子どもに対して、「卒業式のまんじゅうあげない」とか、「卒業式のコサージュあげない」とか言われたり、もらえなかったりするケースはたくさんある。それらについても、「学校の場で、(保護者が会員か非会員かなどで)差別はおかしい」と文科省は言えますか?

前川 それは言えると思う。けれども、こういうことを文科省がいちいち、言わなければいけないのが本当はおかしい。学校教育は自治の問題であり、文科省は法律上、与えられた権限の中でしかものを言うべきではない。本来、市町村の住民の間で解決しなければならないことです。お上に頼ろうとするものではない。

――それは正論なんですけど、実際、長年の慣習や「伝統」、PTAとのやりとりや改革の長い道のりを考えると、とても割に合わない。「文科省が後押ししてくれれば」と思う気持ちは分かります。まんじゅうやコサージュがもらえず子どもが仲間はずれにされた気持ちを味わうかもしれないと想像したら、たいていの親は矛盾を飲みこんで「入会します」と頭を下げます。

前川 まんじゅうが必要なら、学校はPTAじゃなくてむしろ地域の人に頼むべきじゃないのかな。いやそれは、まんじゅうじゃなくてもパンでもいいけど。

――そうしたらきっと今度は、「町内会に入ってない家の子どもにはまんじゅう渡さない」と言う人が出てきちゃいますよ(笑)

前川 要するに、不合理なことは不合理だと、声を出すことがやっぱり大事でしょうね。PTAにはね、本当に日本社会の病理みたいなものがたくさんつまっていると思います。文科省の中でも、自分自身の問題として困った経験をしている母親職員が相当いるはずなので、彼女たちがいずれ、変えてくれそうな気がするけれどもなあ。

 あ、でもこれが、「お母さんの問題」だってことが、また問題ですよね。日本の性差別の構造を反映しているってことだから。

堀内京子(ほりうち・きょうこ)
1997年、朝日新聞に入社。現在は経済部で労働分野を担当。特別報道部、文化くらし報道部。執筆陣の一人として「徹底検証 日本の右傾化」(筑摩選書)、「まぼろしの日本的家族」(青弓社)、「ルポ税金地獄」(文春新書)。移民/外国人労働者、家族と国家、ブラック研修、ADHD/ASDに関心。
田中聡子(たなか・さとこ)
2006年、朝日新聞社入社。盛岡総局、甲府総局、東京本社地域報道部を経て、17年から文化くらし報道部。PTA、二分の一成人式などの教育現場の問題のほか、自治会など地域コミュニティーへの動員などについて取材している。

            ◇

 PTAのあり方を考える「PTAフォーラム ~取り戻そう、自分たちの手に~」が5月18日午後2時半から、朝日新聞東京本社の読者ホール(東京・築地)で開かれます。主催はPTAフォーラム実行委員会、後援は論座、東京すくすく(東京新聞)、朝日新聞#ニュース4U。

 保護者の負担軽減を目指す「PTAのあり方検討会」設置を公約に掲げて当選した兵庫県川西市の越田謙治郎市長や、PTA改革に取り組んできた福本靖・神戸市立桃山台中校長らがパネリストに。PTA問題のワークショップ、憲法の視点からPTA問題を発信する木村草太・首都大学東京教授への質問コーナーもあります。詳細や申し込みは応募フォーム
から。参加費2千円。フォーラム終了後、希望者で懇親会も予定。問い合わせは実行委員会(ForumPTA2019@gmail.com)へ。

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筆者

前川喜平

前川喜平(まえかわ・きへい) 元文科省事務次官 現代教育行政研究会代表 

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部官僚トップの文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。加計問題では「総理のご意向」文書などについて証言。現在は自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。現代教育行政研究会代表。