2019年05月14日
日本の産業経済は製造業の国際競争力に依存しており、製造業で得た利益に基づいて経済が回っている。2018年の製造品出荷額は317兆円であり、都道府県別では1位が愛知県の47兆円、2位は神奈川県の17兆円で、15兆円以上は大阪府、静岡県、兵庫県を含め5府県である。愛知県は日本の15%を占め、静岡・三重・岐阜の東海4県を合わせると80兆円となり、25%がこの地域に集中している。愛知県の中でも西三河地区は26兆円と神奈川県をしのぎ、豊田市は単独で15兆円弱と兵庫県に迫る。西三河を中心とする自動車産業が日本経済の基盤を担っている。
その場所を襲うのが南海トラフ地震である。昨年6月に土木学会が、南海トラフ地震が発生すると地震後20年間の経済被害は1410兆円におよび、日本は世界の最貧国になる恐れがある、と発表した。西三河地域の地震対策が不十分であれば、これが現実のものになる。このため、西三河地域の市町は産業界や大学と連携して西三河防災減災連携研究会を設立し、取り組みを強化している。
製造業の地震対策はいまだ命を守る段階にあり、事業継続のための対策は途上にある。工場の稼働には、建物・機械・技術者・情報システムの全てが必要だが、全ての地震対策が滞りなく行われている工場は稀である。建物の耐震基準は、命を守ることを基本としており、機能維持を保障するわけではない。機能維持のための耐震対策が必要である。天井や内装材などの落下、土間の損壊やアンカー不足での製造機械の位置ずれなどで、操業は容易に止まる。これらを修理する技術者確保が遅れれば操業停止は長期間にわたる。生産を司る情報システムの健全性も重要となる。
さらに、これらを支えるのが、電気、ガス、情報通信、上下水、工業用水、燃料などのライフラインである。また、従業員が出勤するには、公共交通機関、保育園・学校・福祉施設など、地域社会全体が健全である必要がある。もっと深刻なのは、海抜ゼロメートル地帯のような立地問題である。堤防の破堤、浸水、液状化など個社での対応は不可能であり、移転や代替生産なども視野に入れる必要がある。
耐震化3万点の部品を3万社の企業で製造・組み立てする自動車産業は、巨大なサプライチェーンを構成している。個々の工場は、部品・素材などの仕入れ先や、製品の納品先が稼働し、物流システムが健全なことが操業の前提になる。しかし、多くの企業が把握しているのは、1次下請けの情報に留まっており、それ以下のサプライヤーの情報は下請け企業に委ねている。自動車産業は、2007年新潟県中越沖地震でのピストンリング工場の停止や、2011年東北地方太平洋沖地震での自動車用半導体工場の停止などの教訓から、サプライチェーンの全体像の把握に努めている。
しかし、食品産業のように個々の企業のシェアが少ない業界では、
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