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カラフルな学校ってなに 幸せの道筋と職員室改革

ダイバーシティーやインクルージョンな社会を生き抜く子どもを育てるメソッド

岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

『カラフルな学校づくり ESD実践と校長マインド』(学文社)という一冊の本が学校関係者の間で話題を呼んでいます。著者は、現役の公立小学校長。子どもたち同士が多様性を認め合うようになるためには、まず教職員が変わらないといけないと説きます。教師のクラス経営や校長の学校経営の改革で示されているヒントは、ビジネスや地域コミュニティーのマネジメントにも通じるものがありそうです。子どもたちの幸せへの道筋と職員室改革について聞いてみました。3回に分けて紹介します。

カラフルな学校1拡大イメージ写真 Sellwell/shutterstock.com

ダイバーシティーやインクルージョンな社会を目指して

 インタビューに応じてくれたのは、本の著者である横浜市立日枝小学校の住田昌治校長(61)です。

『カラフルな学校づくり』の著者、住田昌治さん拡大『カラフルな学校づくり ESD実践と校長マインド』の著者、住田昌治さん
 1980年から横浜市内の公立学校で教員を務めてきました。2010年度から17年度に永田台小学校長になり、18年度から日枝小学校長として勤務しています。ユネスコが中心になって世界で推進しているESD(持続可能な開発のための教育)に取り組むほか、学校の働き方改革や学校経営改革の実践者としても知られています。著書は主に永田台小学校時代の取り組みをまとめたものです。

 日本は今、東京オリンピック・パラリンピックの開催をきっかけに、ダイバーシティーやインクルージョンな社会への転換に向けてアクセルが踏まれています。公立小学校も例外ではなく、多様な背景を持つ子どもたちが一緒に学ぶ時代を迎えています。

 SDGs(持続可能な開発目標)という言葉もここ数年よく聞きます。15年9月の国連サミットで採択された16年から30年までの国際目標で、持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットが示されています。地球上の誰一人として取り残さないことを誓っており、日本政府や各企業も取り組み始めています。

 住田さんが取り組むのは、この教育版、学校版です。

学校でもある1色に染められる危険性

『カラフルな学校づくり』(学文社)拡大『カラフルな学校づくり ESD実践と校長マインド』(学文社)
――著書のタイトルにもなっている「カラフルな学校」というのは、多様性のある子どもたちがそれぞれを認め合って学び合う学校ということですか。

 SDGsというと、自然界で起きている多様性の喪失から守っていこうということをイメージする人が多いかもしれません。しかし、人間社会の中にも、多様性というものがあります。学校現場でも、1色に染められる危険性があると思います。

 例えば「ブラック」という言葉があって、その対語としての「ホワイト」をいい意味のように感じる人もいると思います。しかし、1色に染まるという意味ではどちらの色も同じで、私は危険だと思っています。

 子ども同士がそれぞれの良さを認め合うということから言うと、自分の色を発揮していくことが大切であり、違いは誰にでもあって、それぞれの違いを知り、認め合わないといけないということです。それは障害のあるなしにかかわらずでもあります。

 教師は、まずこういうことを知らないといけません。例えば、違いをクラス全員の前で明らかにしながら叱ると、それを見ていた子どもたちは、そこから除外することを学び、差別やいじめにつながってしまいます。


筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター、2022年4月からweb「なかまぁる」編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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