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PTAを「保護者が学校にモノ申す場」にした2人

校長とPTA会長はどうやって改革を進めたのか? 改革は広がるのか?

田中聡子 朝日新聞文化くらし報道部記者

二つの思いが結びついた「エントリー制」

――結果的に、PTAの仕事を強制的に割り振るのではなく、手挙げ方式のエントリー制になりました。

拡大今関明子さん
今関 エントリー制は「仕事を担う」ことが大事なのではありません。学校とかかわるきっかけにしてほしかったんです。活動を見直して負担を減らすことでPTAに参加するハードルを下げ、運営委員会に足を運ぶことにつなげたかった。

 ポイント制(活動ごとの負担感をポイント化し、「卒業までに○ポイント」などのルールを定めて活動を事実上強制する仕組み)で保護者を縛ったり、役員をくじ引きで決めたりするのって、活動を完遂することが目的化し、「子どもたちのために」からかけ離れてしまっています。本部役員を長年務めて、役員が自己満足になったら恐ろしいと強く感じました。自己満足のために保護者を縛り付けることが、本部役員にはできてしまう。そういう姿を見て「PTAは怖い」と弱い立場の保護者が言うくらいなら、そんな怖いPTAはなくていいと思いますね。

福本 保護者の「いやな思いをしたくない」と、僕の「教育環境のためには保護者の意見を採り入れるしかない」という二つの思いがたどりついた結論だったんです。もともと、「PTAがいなければできないようなことは、やめればいい」と考えていました。PTAの上部団体や地域団体が、PTAを「都合のいい組織」として動員するのもおかしいと考えています。

 ただ、これまでPTAというと、強制加入や会費の取り方の問題といった点からばかり問題提起されてきました。そういう問題の解決は、たとえるなら、ばんそうこうを貼るようなもので、根本的な治療ではない。では、根本的な治療とは何か。それは「子どものために、親と学校は何ができるのか」という原点を問うことだと考えました。

――保護者の「いやな思いをしたくない」には、鈍感な校長も多いようです。

拡大福本靖さん
福本 「PTAが理不尽だ」という保護者からの訴えだけでは、保護者間の話だけにとどまってしまい、響かないことも多いでしょう。だったら、校長の仕事である「学校運営」という観点から訴えることです。

 課題が山積する教育現場に保護者の考えを反映させないと、学校運営が立ちゆかなくなることは明らかでしょう。形式や体裁を整えることに精いっぱいになるのではなく、子どものことを一番大事に考える校長には響くはずです。子どもと毎日一緒に過ごしている親は学校運営から外せないのですから。

 「PTAは学校と別の組織」と我関せずの校長もいるようですが、そんな理屈は通用しませんよ。別組織と言っても、学校がなくなればその学校のPTAはなくなるんですから、事実上、学校の一部でしょう。公職としてそこで仕事をする校長にとって、PTAは「別組織の問題」ではありません。

学校運営に興味を持ってもらいたい

――「学校運営に保護者が協力」という言葉は、とらえようによっては「動員」されそうで、警戒をしてしまいます。教員の多忙化などで、動員に拍車がかかりそうなご時世でもありますので。

福本 国が家庭や地域社会の「教育力」を強調するようになり、「負担が増える」と身構えてしまう気持ちも分かります。ずいぶん気軽に「家庭」なんて言ってますが、あれはどうしようもなくて困っていていい方法がないから、「地域」とか「家庭」とかファジーな言葉で表現しているだけでしょう。私が言っているのは、要は「学校運営を家庭に返す」ということです。保護者が学校運営に興味を持ち、参加してくださいということです。

拡大本多聞中の改革の際に配布したプリントや資料

 本多聞中でも、いまの学校でも同じ仕組みを採り入れていますが、学校の意思決定が見違えるほどスムーズになります。たとえば、毎年4月の家庭訪問を、今年度は希望制にしました。2月の委員会で私から「いりますかね」と問いかけたら、「もういいんちゃう」という意見が多かった。そこで保護者に意見を聞くと、希望したのは1割。「じゃあ、やめよう」と。先生も保護者も負担がぐっと減りました。

 運営委員会がなかったらどうでしょうか。学校だけで「やめます」と決めて、結果だけを保護者に伝えたら、必ず反発があります。ばらばらに来る保護者からの質問に、教員が対応しなければなりません。

 今はテスト範囲や女子のズボンについても話し合っています。いろいろな意見を一度に聞けるので、すごく効率よく意思決定ができるんです。

――学校に意見をすると、すぐに「クレーマー」扱いされることもありますよね?

福本 クレームと要望は違います。保護者が学校に要望するのは、至極当たり前のことですよ。公立学校の場合、原則的には保護者は学校を選べないわけです。私たちは、その学校に仕事でやってきている。保護者が要望し、学校が要望に耳を傾ける。何の問題があるのでしょうか。


筆者

田中聡子

田中聡子(たなか・さとこ) 朝日新聞文化くらし報道部記者

2006年、朝日新聞社入社。盛岡総局、甲府総局、東京本社地域報道部を経て、17年から文化くらし報道部。PTA、二分の一成人式などの教育現場の問題のほか、自治会など地域コミュニティーへの動員などについて取材している。

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