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性犯罪無罪判決、本当の問題点は何か

司法関係者の犯罪者と被害者に対する洞察力の欠如こそ問題だ

河合幹雄 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)

問題なのは不起訴処分の数

 性犯罪者にできるだけ有罪判決を出したければ、問題なのは無罪判決の数ではなく、不起訴処分の数である。送検事件の約半分しか起訴されないということは、逮捕され検察官に送致されたにもかかわらず、検事が不起訴と判断し裁判にかけられない事件が千のオーダーあるということである。このうちの何割かは、本当に嫌疑なしなど、真犯人でないケースであるとしても、多くは、示談成立等で起訴猶予や嫌疑不十分(証拠不十分)で不起訴である。その数は、今回問題にされた無罪判決の数より二けた上であろう。

 これらの事件を起訴すれば、その何割かは有罪になり、有罪判決は増える。その結果、当然、無罪判決も増える。これが正しい方向である。現在は、検察官は起訴を絞りに絞り、裁判官は必ず有罪にするという奇妙な運用なのである。このことは検事が決定者で、勝負は取調室で決し、判事がかかわる第一審はまるで控訴審であることを意味する。平野龍一が「日本の刑事司法は絶望的である」と述べた所以(ゆえん)である。一応、このような運用の正当化理論はあり、日本では、ひとたび起訴されれば、たとえ無罪判決がでても社会的に葬られる恐れが大きいので、慎重に起訴するというものである。

 また、被害者が公判を望まないということも言い訳にされてきた。今後のあるべき方向は、 ・・・ログインして読む
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筆者

河合幹雄

河合幹雄(かわい・みきお) 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)

1960年、奈良県生まれ。京都大大学院法学研究科で法社会学専攻、博士後期課程認定修了。京都大学法学部助手をへて桐蔭横浜大学へ。法務省矯正局における「矯正処遇に関する政策研究会」委員、警察大学校嘱託教官(特別捜査幹部研修教官)。著書に『安全神話崩壊のパラドックス 治安の法社会学』『日本の殺人』『終身刑の死角』。

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