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外国人の日本語教育、地域により大きな格差

自治体任せの状況に終止符を

田中宝紀 NPO法人青少年自立援助センター  定住外国人子弟支援事業部・事業責任者

言葉がわからない困難、多岐にわたり長期的な影響も懸念

 特に定住者や外国人労働者の家族、日本国籍を有する海外ルーツの方々や子どもたちなど、日本語学校等で学んでいる留学生以外が日本語を学ぶ機会はその質も量も限定的です。日本語がわからないまま、学ぶ場もなく、日本での生活に必要な行政手続きや医療や子どもの教育等の場面において、多くの困難な状況に直面しているのが現状です。

 例えば、海外にルーツを持つ子どもたちの内、日本の学校に在籍しているものの日本語がわからない子どもたちが全国で43,000人以上いることは、拙稿でもご紹介をしました。その内10,000人以上が学校の中で日本語支援が受けられず、無支援状態にあることが先日もメディアに取り上げられていましたが、教育を受ける権利の観点からも危機的な状況にあると言って過言ではありません。

 日本語を学ぶ機会が得られない子どもたちが、教室の中で友達も作れず、勉強についていくこともできず、孤立して学校に行けなくなってしまうようなケースを筆者は数多く目の当たりにしてきました。母語も日本語もどちらも中途半端な状況となり、心身のバランスを崩してしまう子どもたちもいます。このような状況に陥っている海外ルーツの子どもたちやその家族は日本への永住・定住を希望している場合が多く、筆者が支援する家庭の子どもたちも、97%は帰国の予定がないと答えています。彼らが日本の学校で十分に学び、成長し、日本社会に巣立っていけるよう適切なサポートを行わないことで生じるリスクは、その子どもや家族に留まらず、日本社会全体に及ぶ可能性が高いのです。

懸念される日本語教育の担い手不足

拡大日本語教師の就業状況
 多様な人々が共に生きる社会を実現するために、日本語教育が重要な役割を担うことは間違いありませんが、実は現在に至るまで、日本語教育には法的な足場が整備されていない状況が続いています。一般的に「日本語教師」と呼ばれている人々の「資格」は公的なものではなく、民間の養成講座を受講したり、日本語を教える能力をはかる試験に合格した人々がその担い手となっています。さらに日本語教師の内、常勤で働く日本語教師は全体のわずか13%で、約30%は非常勤で働いており、残る57%は無償のボランティアが担っていることが文化庁の調査(平成29年度「国内の日本語教育の概要」)から明らかとなっています。給与水準の低さから、日本語教師になりたいけれどなれない若者が少なくありません。

 日本語教育の多くを担うボランティアも高齢化が進み、活動が維持できないと言った問題が生じるなど、今後、増加していく日本語教育の需要にどこまで対応できるのか、担い手の不足が懸念されています。

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筆者

田中宝紀

田中宝紀(たなか・いき) NPO法人青少年自立援助センター  定住外国人子弟支援事業部・事業責任者

1979年東京都生まれ。16才で単身フィリピンのハイスクールに留学。 フィリピンの子ども支援NGOを経て、2010年より現職。「多様性が豊かさとなる未来」を目指して、海外にルーツを持つ子どもたちの専門的日本語教育を支援する『YSCグローバル・スクール』を運営する他、日本語を母語としない若者の自立就労支援に取り組む。 現在までに22カ国、500名を超える子ども・若者を支援。日本語や文化の壁、いじめ、貧困などこうした子どもや若者が直面する課題を社会化するために、積極的な情報発信を行っている。

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