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テレビは「改元」をどう伝えたか

“象徴天皇”の課題を伝えず、“ことほぎ”一色に染まった

水島宏明 ジャーナリスト、上智大学文学部新聞学科教授

内容がない「ことほぎ」の言葉のオンパレード

 他方で、一連のテレビ番組では各社共通して、お祝いムードを盛り立てる「ことほぐ」言葉が過剰に使われた。「ことほぐ」という言葉は漢字では「言祝ぐ」あるいは「寿ぐ」と書く。広辞苑では「言葉で祝福する」という意味だと説明されている。放送で使われた言葉を改めて書き出してみると、あまり内容がないように思える「盛り上げるために盛り上げる」表現や過剰な敬語や丁寧語が散見された。さらに「天も味方してくれている」「皇居が笑っている」というような、普段のテレビではあまりしない「神がかった」表現もテレビでは放送されていた。例を挙げると、5月1日の日本テレビ「news every.特別版」で放送された以下のようなやりとりが典型といえる。

藤井貴彦アナウンサー
「さらにですね。空が晴れやかで、所さん、お二人にとって今日一日が晴れて良かったなという思いがあったんでしょうか?」

所功京都産業大学名誉教授
「本当にうれしいですね。やはり天も味方してくださったというか。本当にことほいでくださっている感じですね」

 この場合、「ことほいでくださっている」の主語は誰なのか。会話の流れから解釈すれば、「天」あるいは「神様」だろう。「神様が祝ってくださっている」という、ふだんはテレビで出演者が使うことがない言葉だが、こうした宗教がかった言葉が堂々と語られていた点は注目に値する。

 この日本テレビ『news every. 特別版』では天皇、皇后両陛下が車で御所と皇居を移動する様子を生中継する場面で「皇居を擬人化する言葉」も飛び出した。ちょうど新緑が映える晴れの天気に恵まれた話題の中での出来事だった。

藤井貴彦アナウンサー
「小山さん、やはりお二人にとって晴れというのは?」

小山泰生さん(天皇陛下の元同級生)
「本当に新緑がきれいで皇居が笑っているというのか、そういう感じでございますよ」

 「皇居が笑っている」という表現、皇居を人に例えた擬人法だが、筆者は初めて聞いた。

 5月1日午後に同じく日本テレビで放送されていた『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ制作)でも司会者の宮根誠司とゲストコメンテーターのおおたわ史絵との会話は、「日本礼賛」ともいえるような方向に向かっていた。

宮根誠司キャスター
「おおたわさん、平成という時代は非常に災害も多かった。そのたびに天皇皇后両陛下が被災地に赴かれ、我々と同じ目線でお話くださり、励ましてくださいました。そこがまさに平成の時代の象徴というものを具現化されたと思う。
今度は新しい天皇皇后両陛下はどのような形をお示しになるのでしょう?」

おおたわ史絵(=総合内科専門医)
「そうですね。これだけ、世界という意味で見ると、争いや戦いが多い中で、日本は平成の30年間は世界と戦争することなく過ごしてきた。
あの、やっぱりすごい国だと思うんですね。
これはおそらく新天皇陛下も新皇后陛下も望んでいらっしゃると思いますので、やはり世界の平和と日本の平和というのを第一に考えていくべきだと思います」

宮根誠司キャスター
「日本という国は見事な国ですね」

 「日本は見事な国」。宮根のこの言葉の最後にこのコーナーはCMに入ってしまったが、同じように「日本の現状を肯定する言葉」=日本礼賛言葉が他の番組でも相次いだ。

 5月5日のテレビ朝日『サンデーLIVE!!』。これは1週間のニュースを振り返り、世の中の大きな流れを視聴者に見せていく報道番組だが、コメンテーターの弁護士で中央大学法科大学院教授の野村修也の言葉が印象に残った。

 前日に行われた4日の一般参賀の際に、天皇陛下が気温が上昇したことを受けて集まった人たちの健康を気遣うコメントをされた点について、野村は以下のように話している。

野村修也・中央大学法科大学院教授
「『このように暑い中、来ていただいたことに感謝いたします』というお言葉は、6回のうち2回あったんです。もともとあった言葉につけ加えられたということですが、何か私たちに対する思いやりを感じられる一般参賀だったなという感じがします。
私個人としては、あのお言葉を聞いて、 何か心の中に染み入ってくるようなわかりやすさ、伝わりやすさをすごく感じました。
個人としては令和の時代に何かこう、ちょっと 怒りとか憤りを感じたときに、あのお言葉で感じた令和が始まるときを思い起こして自分自身の 気持ちを整えたいなという気がしました」

 野村の言葉は、何か怒ることなどがあっても「自分自身の気持ちを整え」ることで受け入れようとしたいと姿勢を改めたいと主張しているように聞こえる。

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筆者

水島宏明

水島宏明(みずしま・ひろあき) ジャーナリスト、上智大学文学部新聞学科教授

1957年生まれ。札幌テレビ、日本テレビでテレビ報道に携わり、ロンドン、ベルリン特派員、「NNNドキュメント」ディレクター、「ズームイン!」解説キャスター等の後、法政大学社会学部教授を経て16 年4 月から現職。主な番組に「ネットカフェ難民」など。主な著書に『内側から見たテレビ』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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