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ペットロスは「治す」ものなのか?

癒えない悲しみ 心のすき間を狙う非科学的なペットロス・ビジネスに注意を!

梶原葉月 Pet Lovers Meeting代表、立教大学社会福祉研究所研究員

「代わりのペットを飼えば?」は禁句

梶原さん1拡大ペットロスのことを伝える1997年09月11日付の朝日新聞朝刊
 ペットロスというのは、そもそも「治す」ものではない。色々なきっかけで、もとの生活のリズムを取り戻し、他人から「立ち直った」と見えるような日常に戻ることはできても、愛するものを失う悲しみ完全に帳消しにするなどできない。動物と暮らしたことのない人には、特にこのへんのニュアンスを理解するのは難しいのかもしれない。

 ペットを亡くした人に「代わりのペットを飼えば?」というのは禁句なのだが、必ずと言っていいほど、私たちのミーティングを訪れる参加者は、ペットを飼わない周囲の人たちからこのようなアドバイス(?)をされている。

 人間のことであれば、愛する者を失った人に対して、「すぐに代わりが見つかる」などと慰める人がいるだろうか?

大学病院で1年半の抗がん剤治療で知り合った仲間と

 私が自助グループを作ったきっかけは、自分の愛猫がリンパ腫になり、日本獣医生命科学大学(当時は日本獣医畜産大学)で1年半抗がん剤治療を受け、亡くなったことだった。抗がん剤による治療など専門的な動物のがん治療をしていたその病院には、同じような患者(とその飼い主)が集まっていた。そこで私は、同じ気持ちを持つ人と語り合うことが、どんなに心の支えになるかを体験したのだった。

 病院の待合室で知り合った仲間と1999年に小さな会を立ち上げ、2000年からはミーティングを、03年からは、ペットロス経験のあるボランティアが電話で話を聴くペットロスホットラインも運営している。19年6月2日に第76回ペットラヴァーズ・ミーティングが池袋で開かれたが、現在までに参加者はのべ約1000人、ペットロスホットラインは6月2日までに1241件の電話を受けている。

梶原さん1拡大Aarontphotography/shutterstock.com

 ペットロスの概念が日本に紹介されたのは、PLMがこの活動を始める数年前。たまたま日本獣医生命科学大学で私の猫も担当してくださった鷲巣月美元教授(故人)が、まさに日本にこの概念を広めたパイオニアだった。鷲巣先生のご尽力などもあって、この20年あまりで言葉自体は認知されるようになってきたと思う。ペットロスとは、ペットとの死別、あるいは別離(行方不明など)によって生じる悲嘆のことだが、用語として知られるようになっても、本当に、その中身が十分理解されるようになってきたのだろうか?

 私たちがミーティングを始めた当初借りていた公共の施設では、会議の目的を確認した担当の男性から「あはっはー、あんたたち暇なんだねえ〜」と心底驚いた様子で大爆笑されたものだ。さすがに近年、PLMの活動が笑われることはなくなった。

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筆者

梶原葉月

梶原葉月(かじわら・はづき) Pet Lovers Meeting代表、立教大学社会福祉研究所研究員

1964年東京都生まれ。89年より小説家、ジャーナリスト。99年からペットを亡くした飼い主のための自助グループ「Pet Lovers Meeting」代表。2018年、立教大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。近著『災害とコンパニオンアニマルの社会学:批判的実在論とHuman-Animal Studiesで読み解く東日本大震災』。横浜国立大学非常勤教員、日本獣医生命科学大学非常勤講師。

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