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裁判員制度10年間の総括と残された問題点(下)

瀬木比呂志 明治大法科大学院教授

裁判員の負担の問題

 ②裁判員の負担が重い(5月12日)というのは事実であろう。しかし、それについては、先のとおり、一定の重罪事件すべてについて裁判員裁判を行うことにしている不合理の結果という側面も大きいだろう。また、無罪が主張される事件では、被告人側に十分に争う機会が与えられるべきことも当然だ。

 もしも、どうしても負担が重いというなら、裁判員制度それ自体の是非を考え直す必要もあると思う。

 「まず適正な裁判、刑事裁判制度の改善という要請があり、そのための一つの方法として裁判員制度があるはずであって、その逆ではない」からだ。本末転倒の議論になってきているなら、制度それ自体の是非をも含めて考えるべきだ。

 僕自身は、日本の裁判官制度の改革(本格的な法曹一元制度〔部分的法曹一元についても、たとえば、オランダでは8割、ベルギーでは5割について実施されており、本格的なものといえる〕、あるいは、裁判官の任用、異動、昇進等を独立性、客観性の高い委員会にゆだねる制度〔たとえばベルギーで採用〕)によって刑事裁判の適正化も相当に図られるのだから、そうした改革を進めることがより抜本的ではないかと考える。その上で、適切な市民の司法参加の制度を考えればよい(その場合には、より負担の軽い意見聴取中心の制度等も考えられるだろう)。

 この点、5月16日記事には、「最高裁が、評議や公判前整理手続のあり方についての批判を含んだ報告書を出した」とも読める記述があるが、ここは具体的に知りたいところだ。僕にも十分に意味が取れないのだから、ごく普通の読者には、この記事だけでは、何のことかほとんどわからないだろう。

これについても、官の見解を、こういう未消化なかたちで、しかも一面で出すことへの疑問は、提示しておきたい。

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筆者

瀬木比呂志

瀬木比呂志(せぎ・ひろし) 明治大法科大学院教授

1954年名古屋市生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。裁判官として東京地裁、最高裁などに勤務、アメリカ留学。並行して研究、執筆や学会報告を行う。2012年から現職。専攻は民事訴訟法。著書に『絶望の裁判所』『リベラルアーツの学び方』『民事訴訟の本質と諸相』など多数。15年、著書『ニッポンの裁判』で第2回城山三郎賞を受賞。

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