バスケットボール界にもたらすものは?
2019年06月07日
もっとも、会見の登壇者は明らかにされていた。男子プロバスケットボール「Bリーグ」の大河正明チェアマン、2018~19年シーズン17億円の収益が見込まれる「千葉ジェッツ」島田慎二社長と、同レギュラーシーズンMVPを獲得したスター選手、富樫勇樹(25)となれば、無論、察しはできる。シーズン終了後に担当記者懇親会が開かれ、この席で「1億円プレーヤーが誕生したら注目されるでしょうね」といった雑談があったという。メディアのこうした要望が、現在の新しいファンをも開拓できるいい機会だと検討する柔軟性や対応力、個人の年俸を公開する、ある意味の透明性が、先行するプロスポーツとは違ったBリーグの持ち味とも指摘できる。
察しの悪い友人たちからは「引退するの?」と連絡が殺到していたと苦笑いしながら、Bリーグ発足3年を終えて、リーグ全体が掲げてきた目標「一億円プレーヤー」の第一号となった心境を明かした。
「正直、この(年俸を公開する)会見に出るかどうか迷いましたが、今バスケットを頑張っている子どもたちに、夢のあるリーグだと目標にしてもらえるならと踏み切った」
93年生まれの富樫は新潟・新発田市出身で父親の指導のもとバスケットボールを始めた。小柄ながらパス、ドリブル、またゴールを導く独創的なアシストで中学時代には全国レベルで知られる有望株に。国内で強豪高校には進学せず、米・モントロス・クリスチャン高校に留学し、同校が全米高校ランキング2位となる大躍進に貢献するなど、NBA(米男子プロバスケットボールリーグ)を夢見てチャレンジを続けた。
プロキャリアのスタートは、高校卒業を見込んで契約ができる、当時「bjリーグ」が設けた「アーリーエントリー制度」で「秋田ノーザンハピネッツ」と結んだ契約。半年間で100万円と、準備金のようなもので契約と表現できる形態とは異なるが、富樫は会見で「アーリーエントリーで最初に結んだ100万円の契約から、1億円まで来られたことは、自分の力ではなく、周囲で支援して下さった方々やファンのお陰です」と、日本バスケットボール界の厳しい成長過程をそのまま歩んできたようなキャリアを噛みしめていた。
あえて会見に踏み切った真意は、金額の話でなく、自らの責任を認識し覚悟を決める、そんな目的にあったのだろう。表情が決して緩まなかったのは、コートでもそれ以外でも「1億円プレーヤー」として看板を背負う重みのせいだった。
野球でもサッカーでも、年俸は「推定」と表記される。実際の数字は取材できないからだ。今回は、島田社長が「あくまでも基本報酬1億円」と明言した点は国内のプロスポーツでは異例だ。これに勝利給、ボーナスや勝利への貢献度を独自に算出する指数を計上するなどして得られる「インセンティブ」を加えた金額は1億円を超え、基本報酬としたのは金額が富樫の1億円ありきではない経営方針も強調するものだ。
会見の冒頭には、
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