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[30]「#私の住宅要求」が住宅政策を変える

「マインドコントロール」からの脱却をめざして

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

住まいをめぐる切実な声

・給料は増えないのに、家賃だけがどんどん上がってきてる。

・世田谷区で一人暮らししてました。しかし家賃の高い事!1K6畳で月6万円も取られ、仕送りが6割吹き飛びました。

・私も会社の家賃補助がなかったら手取りの給料の半分が家賃で消える。。。これでも都内では安い方とか言われるけど、家賃に加えて電気ガス水道食費もかかるし、引っ越し代とか家具家電とかも必要だったから全然厳しい。学生時代のバイト代を崩しながら暮らしてるよ

・私も40代前半だが、自立して生活しようにも最低賃金ギリギリの時給では一人暮らししようにもかなりキツイ。最低賃金ギリギリでも十分生活できる家賃にしてほしい。

・「最低賃金○時間分以上は、家賃として徴収してはならない」と決めてほしい。それで家主が苦しいってんなら、国が補助してさしあげて。

・部屋を借りる際の初期費用を安くして欲しい、敷金+礼金+保証金+保証人+火災保険でとんでもない額になります。あとは、若い単身者でも住める公共住宅があったほうが良いです。

・引っ越し費用が安ければ、うつになんかならなかった。

 住まいをめぐる切実な声の数々。これらの声は、私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」が今年5月下旬にTwitter上で呼びかけた「#私の住宅要求」というキャンペーンに寄せられたツイートである。

 このキャンペーンは、住まいに関する困りごとや住宅政策に関する要望を「#私の住宅要求」というハッシュタグを付けてもらって、各自発信してもらおうという内容だ。

 キャンペーン開始時、私は以下のツイートで呼びかけを行った。

・昨年、亡くなられた早川和男先生は、生前、「日本人は住宅に公的支援がないことに疑問を感じない。マインドコントロールにかかっているようなものだ」と指摘されていました。
#私の住宅要求 を声に出すことで、マインドコントロールから抜け出そう!

 住まいを基本的人権と位置付ける「居住福祉学」を提唱した早川和男神戸大学名誉教授は、『住宅貧乏物語』(1979年、岩波新書)、『居住福祉』(1997年、岩波新書)等の著作を通して、日本の住宅政策の問題点を指摘し続けてきた。同時に早川教授が強調していたのは、日本人の住宅に対する意識自体を変える必要性だ。私はその言葉をお借りして、まずは住まいについての困りごとをそれぞれが口に出すことで、意識を変えていこうと呼びかけたのである。

 「#私の住宅要求」キャンペーンは大きな反響を呼び、短い期間にさまざまな内容のツイートが発せられた。

 上記はその中から、家賃や初期費用の高さに関するツイートを抜粋したものだ。

入居差別の問題

 家賃・初期費用の問題と同時に、たくさんの人が不満を表明した問題の一つは入居差別の問題である。

・単身者差別はやめて下さい。日本では、女性の方が寿命が長いのですから。

・女性で障がい者だと物件が借りにくいと聞いたことがあります。

・シングル母世帯への住宅差別があります。「そういう人はうちではちょっと。」と不動産屋で門前払い。働いてるかとか保証人いるかとかそういうの一切、聞かれない。それ以前に「シングル母だ」ってだけで「そういう人」なんだそうです。不当。差別だと思います

・某大手不動産(仲介)業者で、表に出さずに、社内の内規でもって、生活保護利用者と、精神保健福祉手帳1級の人には、絶対貸さない会社がありますね。障害者差別解消法施行後も。

・私は救護施設の支援員です。利用者が居宅生活を希望しても「精神障がい者・単身の男性高齢者」といった理由でアパート入居を断られることがあります。しかし、生活能力は十分に備わっている人もいます。病気・年齢・性別などを理由に地域生活のスタートラインにも立てないのは悲しい。

・75歳以上の単身高齢者は部屋探しに大変苦労されています。近年はデジタルタトゥーの問題も深刻化しています。誰もが安心して住まいを確保できる政策が必要です。

・外国人差別はやめるべし。外国人留学生は部屋を借りるのに、本当に苦労している。

・部屋とか借家借りるのに性別・性的指向・障がいの有無、もちろん民族・国籍とか関係ないと思う

連帯保証人や緊急連絡先を求められる慣習に対する不満

 また、意外と多かったのは、賃貸物件の契約時に連帯保証人や緊急連絡先を求められるという慣習に対する不満である。家族関係が希薄化する中、前近代的な慣習はやめてほしいという声が多かった。

・親を保証人にも緊急連絡先にも使えない。保証人は保証会社を使えばいいけど、緊急連絡先に身近な親族を求められても困る。知人の女性に母親のフリをしてもらって凌いでいる。本当は別の方法があるのかな。

・連帯保証人を立てないと借りられないとか、やめてほしい。家賃はまとめて前払いするって言ってもダメなんだよね。

・保証人・緊急連絡先の制度を禁止してください。保証会社を利用してもなお三親等以内の親族の緊急連絡先が必須。セーフティネットのはずの公営住宅ですら保証人が必須。家族がいない人間は、どんなに頑張って働いても貯金しても、家を借りることができない。こんな制度はおかしい。

・社会的養護を出た子どもたち、生活保護の利用者、精神の障害がある方……等の住居探しがとにかく困難です。保証人の問題、引っ越しを自力で出来ない、大家さんから断られる等。
住居=生きること(暮らしの基本)です。家賃補助や住居探しに公的なサポートを。

 この問題については、以下のような悲鳴に近い声も寄せられていた。

・生きる上で必要な住居なのに、審査とか保証人とか会社員じゃないと通りにくいとか、簡単に家に住めなくして…。何のための住居なんだ。金がないと社会的信用がないと、保証人がないと家借りれないんじゃ、ほんとホームレスになるしかないし、絶望だよね。苦しいよね。

・どこも連帯保証人が必要だと言われます。普通に考えても40〜50代をさしかかると親が亡くなってたり叔父叔母が亡くなってたりし始めるんですが、いなくなったら誰に保証人を頼めと?

・身寄りのない生活保護受給者にも保証人を求めるマニュアル対応に呆れます。保証会社とは契約できても、

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