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ADHDの元教員で自閉っ子の母親が気付いたこと

インクルーシブ社会への道のりの第一歩は互いを知ることから

雨野千晴 ライター、講師、漫画家

本当に必要な教育とは何か?

 昨年4月に就学した息子の、初めての授業参観の日。参観した特別支援学級での、滞りなく進む授業に、私は一人がくぜんとした。その日は五つある特別支援学級の合同授業で、その場には複数の教員、介助員がいた。子どもたち全員で図工の制作を始めることになったが、驚くほどに子ども同士の交流がなかった。

 子どもたちはみんな何かあれば教員や介助員に声をかけていた。私の息子は気分が乗らなかったのか、隅の方にたたずんでいた。そして、そこに声をかけにくる子どもも、一人もいなかった。彼はついにその1時間、クラスの子どもたちと一度も関わることがなかった。視線を交わすことすらなかった。

 誤解のないように補足すると、息子は毎日登校するのを楽しみにしているし、特別支援学級での教育に日々尽力しておられる先生方には感謝の気持ちしかない。しかし、子どもたちが社会に出て生きていく上で本当に必要な教育ってなんだろうと考えさせられる時間となった。

みんなにとって心地よい場所とは

 文部科学省の「特別支援教育資料(2019年度)」によると、全国の地域の小中学校の中に併設されている「特別支援学級」の在籍者数は、64947人。障害を持つ子どもだけが集まる「特別支援学校」の在籍者数は、幼稚部から高等部まで含めると、141944人。

雨野さん1拡大雨野千晴さんは、小学校の離退任式で、全校児童の前で自分のことを説明した=雨野さん提供
 特別支援教育についての周知や、発達障害に関する情報の広がりとともに、適切な支援を子どもに受けさせたいと願う保護者も多いだろう。それは、「彼がこのクラスで費やした時間に、もっと彼に適した場所、教育を提供する道があったのではないか」という、自分の思いとも重なるように思う。

 しかし、「彼に適した場所」とは一体どんな場所なのだろう、とも考える。

 それは、区切られた特別な場所ではなく、みんなにとって心地良い、みんなの場所であるべきではないだろうか。いろんな人がいるこの社会で、子どもたちは生きていくのだから、いろんな人がいる環境で、みんなで知恵を絞って工夫をしていくことが、社会に出たときに役立つ教育と言えるのではないかと思う。

 先に述べた、ある年のクラスの児童を巡り私が抱えていた課題、つまり「どうしたら彼がもっと充実した時間を過ごすことができるのか」という課題は、私一人で抱えるのでなく、クラスみんなで考えれば良いのだ。

 子ども30人に対し、カリスマ教師でもない私一人ができることなんて知れている。しかし、子どもたち一人ひとりに力を借りれば、チームとしてなし得ることは無限に広がる。

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筆者

雨野千晴

雨野千晴(あめの・ちはる) ライター、講師、漫画家

1981年生まれ。北海道出身、神奈川県在住。元小学校教員。自閉症・児者親の会会員。36歳の時にADHD不注意優勢型の診断を受ける。うっかりな自分を楽しむ「うっかり女子会」(120人参加)のfacebookグループを運営。障害の有無に関わらずみんな違ってみんないいを体感できるお祭りイベント「あつぎごちゃまぜフェス」実行委員長。ブログ「うっかり女子でもちゃっかり生きる」。

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