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望月衣塑子の質問(3)復活した質問妨害

官邸の執拗な質問妨害に、新聞社や官邸記者たちはどう対応しているのか

臺宏士 フリーランス・ライター

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復活した「質問妨害」

 菅義偉官房長官の記者会見で、望月衣塑子・東京新聞記者に対する質問妨害が5月下旬に再び起きた。

 2018年秋から始まっていた質問途中に司会の官邸職員が質問を遮る行為は、今年3月中旬、いったんはやんだかに見えたが、2カ月余ぶりの復活だった。東京新聞が官邸に改善を求める申し入れを行った後の6月に入り、妨害は再びなくなった。

 いったい、何が起きたのだろうか。

 5月21日午前の記者会見。望月記者は、朝日新聞、テレビ朝日の各記者に続く最後となる3人目の質問者だった。

 「東京、望月です。拉致問題についてお聞きします。2002年の小泉訪朝時は直前まで完全秘匿して水面下での交渉をしたうえで、電撃訪朝での首脳会談をし……」

 質問の前提となる事実関係を共有するための説明を始めてから25秒ほど経過したときだった。司会進行役の上村秀紀・官邸報道室長が突然、「質問に移って下さい」と遮るように声を上げた。

 上村室長は、2018年12月28日に記者会見を主催する内閣記者会に対して、望月記者が事実誤認の質問をしているとして「問題意識の共有」を求める文書を出した人物だ。

 望月記者が直後に口にした質問は、上村室長の妨害に押されて質問に切り替えたかのような形になった。

 「なぜ、水面下交渉という手段を今回は取らないのかお聞かせ下さい」

 それから3日後の5月24日午後、28日午前の質問でもそれぞれ29秒、28秒がたつと上村室長は「質問に移って下さい」と遮ったのだった。

 そして、5月28日午後の記者会見。望月記者は前週から続く質問妨害について菅長官にぶつけた。「菅長官が『世の中の人もそろそろ質問妨害していたことを忘れているだろうからやってみろ』と上村室長に言ったかどうかはわかりません。しかし、3回も続いたのでこれは許せないと思った」と明かしたのだ。

 望月衣塑子記者 東京、望月です。会見での上村室長による質問妨害についてお聞きします。先週からですね、上村室長による質問妨害が再び、再開(ママ)されました。先週と今日の午前で調べますと、25秒から30秒ほどの間に「質問に移って下さい」が3回ありました。あの30秒を越えている長い質問はほかの記者にもあるんですが、そちらには妨害はありません。これ、狙い撃ちのようにも見えるんですが、見解をお聞かせ下さい。
 菅義偉官房長官 全くそんなことありません。
(上村秀紀・官邸報道室長「このあと日程ありますので次最後でお願いします」)
 望月記者 はい。(私の)受け止めとしては妨害に思えます。この妨害行為についてはですね、新聞労連やMIC、知識者や弁護士団体などもこれまで抗議の意を示しまして、官邸前のデモでは現役の記者から面前DVだとの批判も出ておりました。室長の上司は菅長官ですけれども質問者の精神的圧力になるようなこの行為を再開された理由というのは何なんでしょうか。
 菅長官 あのー、この会見は記者会との間で行われておりますから、記者会との間でしっかり対応してますし、そういうことはありえません。

 この日(5月28日)、望月記者は自分の短文投稿サイト・ツイッターに「『そんなことはありません』と、まさかのクラブ(内閣記者会・筆者注)への責任転嫁。記者会が妨害再開を容認するわけもなし。不当な妨害はやめるべきだ」と投稿。関連した投稿は4件に上った。

 怒りの大きさが分かる。


筆者

臺宏士

臺宏士(だい・ひろし) フリーランス・ライター

毎日新聞記者をへて現在、メディア総合研究所の研究誌『放送レポート』編集委員。著書に『アベノメディアに抗う』『検証アベノメディア 安倍政権のマスコミ支配』『危ない住基ネット』『個人情報保護法の狙い』。共著に『エロスと「わいせつ」のあいだ 表現と規制の戦後攻防史』『フェイクと憎悪 歪むメディアと民主主義』など。 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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