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パズルのピースを埋めた百舌鳥・古市古墳群

52カ国の409件を訪ねた筒井次郎記者が読み解く、世界遺産の光と影

筒井次郎 朝日新聞記者

時代を超えて守り抜いた住民自身の物語こそ世界遺産かも

 世界遺産登録の可否を審査したユネスコの諮問機関イコモスは、5月に公表した勧告の中で「古墳のすぐ近くに地域コミュニティーがある。古墳を守ることへの圧力でも助けでもあるが、地域住民や学校、企業は、古墳の保護やガイド、清掃、景観保護に携わっている」と評価した。

 古墳群が築かれたのは、1500年以上も前の途方もなく昔のことだ。それが当時の形を残したまま現代まで伝わったのは、その間に多くの人々が守り、引き継いできたからに他ならない。世界遺産は、人類が残した貴重な足跡であると同時に、時代を超えて向き合ってきた私たち自身の物語でもあるのだ。

世界遺産1拡大百舌鳥古墳群、中央左が大山古墳=堺市、朝日新聞社ヘリから

法隆寺も石見銀山跡も今は登録直後より観光客減少

 世界遺産は「破壊から守り、将来に伝える」ことと同時に、「観光などへの活用」も期待される。いや、本来は「守り、伝える」ことが目的なのだが、地元からは「観光などへの活用」の本音も垣間見えるのである。

世界遺産拡大「法隆寺地域と仏教建造物群」として国内で最初に世界遺産となった法隆寺=奈良県、筆者撮影
 さて、百舌鳥・古市古墳群は、観光客を呼ぶのだろうか。「世界遺産になれば観光客が増える」という考えは、実は正しくない。例えば、奈良の法隆寺。「法隆寺地域の仏教建造物」として1993年に世界遺産登録されたが、当時年間100万人ほどだった拝観者数は、2018年は60万人を割っている。

 2007年に世界遺産となった島根県の「石見銀山遺跡とその文化的景観」も、登録直後は観光客が急増したが、現在はピーク時の半分以下になり、登録前の水準になっている。

世界遺産拡大「石見銀山遺跡とその文化的景観」で一般公開されている龍源寺間歩の坑道跡=島根県、筆者撮影
 世界遺産に登録されることで認知度が上がり、それに伴い観光客も一時的には増えるが、その後もずっと続くとは限らないのである。観光客が増えすぎ、京都のような「オーバーツーリズム」は必ずしも望ましいことではないが、「活用」という観点からは見れば、観光客の増加は一定の目安になる。

 さて、百舌鳥・古市古墳群である。私見では「世界遺産効果」は、数年間あるかもしれないが、工夫をしなければ長続きしないと考える。

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筆者

筒井次郎

筒井次郎(つつい・じろう) 朝日新聞記者

1993年朝日新聞社入社。京都や奈良、姫路など世界遺産のある総局や支局に赴任。現在は延暦寺(世界遺産)や彦根城(世界遺産候補)を抱える滋賀県の大津総局に勤務。寺社や遺跡、それを守る人々への取材を重ねる一方、1997年にライフワークとして始めた世界遺産めぐりは52カ国409件を訪問済み。育児休業を3度、計11カ月取得し、子育て世代の取材にも関心がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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