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大学改革なんてうまくいくわけがない(下)

実務家を教員として採用するというが、優秀な人材が大学に転職するのか

杉浦由美子 ノンフィクションライター

拡大早稲田大学の大隈講堂=東京都新宿区

 経団連の中西宏明会長が大学に求めるものとして「学生に数学と英語の基礎力を身につけさせてほしい」と提言した。文系だから数学はまったくダメとか、理系だから英語は苦手といったことがないようにしてほしいということだ。

 中西会長のいうことは正論であり、そして、今後、企業が求める学生像を示している。

 そのため、国立大学でも文理融合の学部が増えている。今後はどこの大学も英語と数学を学生に身につけさせようとするだろう。

 ようは大学で教える内容を変えなくてはいけないわけで、それが大学改革なのだが、一記者としてそれがそうそううまくいくとは思えない。

 去年、ある難関国立大学の教授がラジオで「大学が追求するのは真実。企業は利益を追求するからけしからん」という熱弁を振るうのを聞いた。ツッコミどころ満載である。企業は利益を追求しないと組織が存続できないのだ。それは目先の利益だけではない。長期的な利益だ。そのためには社会貢献も重要になってくる。

 難関国立大学は黙っていても学生は受験してくるし、利益を出すことを考えなくていいのかもしれない。しかし、大学が法人化された現在、今後もそれを続けていけるのかは謎だが、この教授は自分が退官するまでは大丈夫だと考えているのかもしれない。

 前回述べたが、文系の研究者は「自分だけの真実の追究」を続けてきたわけであり、それは経団連の「ビジネスの場で役に立つ基礎力を大学で身につけてほしい」という求めとは、相いれない。

 そうそう大学の教授陣が、経団連の求めに応じられるとは思えないのだ。社会に出てから役に立つ能力を身につけさせるために、どこの大学も実務家を教員として採用するというプレッシャーを与えられている。しかし、それを実現するのは相当ハードルが高い。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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