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「残業なし」の小出版社の異色ビジネス書がヒット

京都で定食店を営む中村朱美さんの『売上を、減らそう』を刊行したのは明石のライツ社

川本裕司 朝日新聞社会部記者

定例の会議はなし

拡大兵庫県明石市のライツ社は4人で設立された。右から2人目が大塚啓志郎社長、右から3人目が高野翔副社長

 ライツ社は大塚啓志郎社長(33)の祖父が所有する地元のマンション1階の店舗跡を借り、16年9月に4人で設立された。社名には、write(書く)、right(まっすぐ)、light(照らす)の意味を重ねた。

 大塚さんが以前いた京都市内の出版社では仕事に追われ泊まり込むこともあった。新会社では刊行点数を増やして社員を追い込むようなことはせずに、従来にない本づくりをめざした。重要な連絡はメール、社員間のやり取りはLINEでそれぞれ行い、定例の会議はない。出版の企画はLLINEで提案、他の社員の反応で取捨選択されていく。盛り上がれば採用につながり、スルーされればボツになるといった具合だ。

利益の確保が「残業ゼロ」を可能に

 以前は長時間労働の慣習が残り、午後9時、10時まで働いていた。ただ、自身や社員の家庭で妊娠、出産が相次いだことで、昨年秋からは勤務時間(午前9時~午後6時)を超えた残業はしないようになった。

 大塚社長が勤めていた出版社の同僚でもあった営業担当の高野翔副社長(35)によると、刊行点数は年間平均7冊と少ないが、重版率は7割と業界平均の1~2割を大きく上回る。利益の確保が残業ゼロを可能にしている。

 16年12月に出した最初の「大切なことに気づく365日名言の旅」。印税のかからない作りにし、初版6000部で出したところ、6刷25000冊に達した。アフリカなどの少数民族を被写体と同じ姿で撮影するヨシダナギさんの写真集「HEROES」は1万円を超える価格ながら18年4月に出し5刷のヒットに。

 残業したくない会社員の心情を描いた、さわぐちけいすけさん(30)=京都市在住=の漫画本「僕たちはもう帰りたい」は今年3月に刊行され4刷となっている。上司との関係や取引先とのトラブルといった切実な話題を盛り込みながら、スナック「もう帰りたい」で夜ごと繰り広げられるママと20~50代の会社員男女7人との丁々発止のやり取りに本音をちりばめた。

 30ページごとに本文を12色の色紙で変える前例のない本「毎日読みたい365日の広告コピー」も手がけている。

 大塚社長は「執筆を依頼した中村さんに影響を受け、考えていた『残業なし』に本気で取り組むようになった」と話す。

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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