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リニアは「シンデレラ・エクスプレス」になれるか

武田徹 評論家

「JR東海主体」のリニア中央新幹線計画

 こうして着実に成果は出していたが、どこか“未来の鉄道ごっこ”的な雰囲気だったリニア計画が、にわかに現実味を帯びたのは、87年に国鉄民営化が実施されてからだ。葛西敬之・JR東海現名誉会長が自著でこう書いている。

 国鉄分割民営化の枠組みでは超電導リニアの研究開発は鉄道総研が引き継ぐことになっていたが、鉄道総研の予算はJR各社の拠出によっており、研究テーマの予算配分には各社の同意を得る必要があった。一方、この技術を実用化する路線は中央新幹線だけであり、それは東海道新幹線のバイパスであった。 
 鉄道総研は国鉄の開発したリニア技術を引き継いでいるが、超電導リニアを統合された輸送システムとして完成させるためにはどうしても高速鉄道の運用経験が不可欠であり、それもJR東海にしかなかった。そのためJR東海が独自に資金を出して技術開発を進めることに異論を唱えようがないはずであった。この点に着目し、「リニア対策本部」を設置することにしたのである(『飛躍への挑戦』WAC)

 他のJR会社にはまた別の言い分がありそうな気もするが、とにかくJR東海はリニア対策本部の設置に先手を打ち、鉄道総合技術研究所および日本鉄道建設公団と三者共同のプロジェクトチームを結成してリニア新幹線の実現を目指すことになる。

 その際の切り札が自己負担原則だった。1000億円をリニア新幹線実験線のために供出することをいち早く決め、JR各社や政治家、省庁が“金も出すが、口も出す”のを防いで、調整で時間を浪費することなく89年の実験線建設決定にこぎ着けている。

山梨県にあるリニアモーターカーの試験場1997年 山梨県大月市拡大リニアモーターカーの試験場=山梨県大月市、1997年

 この実験線は97年に延長18.4km(後に42.8kmに延長)で完成し、試験走行を始めている。2007年には中央新幹線の東京・名古屋間を自己負担で建設することを取締役会で決定。2010年に交通政策審議会にリニア新幹線建設について諮問し、翌年にはJR東海がリニア中央新幹線の営業主体、建築主体の指名を受けている。同年に東京・名古屋間の整備計画が決定され、2014年には工事実施計画が認可された。

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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

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