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Aマッソがお笑い業界を変えつつあるわけ/上

東京の劇場で増えているショートカットの女の子芸人は、なぜAマッソに憧れるのか

杉浦由美子 ノンフィクションライター

拡大加納愛子(左)と村上愛=撮影 平郡政宏(カウンタック写真部) 

 女性の社会進出が進む中、後退すらしているように見えるのがお笑いの世界である。1980年代は寄席番組で多くの女漫才師たちがネタを披露し、バラエティ番組のMCも山田邦子といった女性芸人がつとめていた。しかし、現在はテレビの中で女性芸人は脇に追いやられているようにみえる。ネタ番組で女性芸人が全く出ない回もよくみかける。

 一方で、東京の劇場では、お笑いを志す若い女性たちが新しいムーブメントを起こしつつある。その原動力となっているが女性コンビ、Aマッソである。コントも漫才もこなす村上愛(31歳)加納愛子(30歳)の2人組は、大阪出身の幼なじみ同士。芸歴は今年で10年目になる。本人たちへのインタビューやファンらへの取材を通して、「お笑いと女性」の今を探っていこう。

デブでもブスでもない女芸人が増えている

拡大加納愛子=撮影 平郡政宏(カウンタック写真部) 
 東京の劇場で、最近、ショートカットの20代女性芸人たちをよくみかける。太っているわけでもないし、面白い顔を強調したメイクをしているわけでもない。ごく普通の可愛らしい女の子たちだ。彼女たちはステージの上で、独創的な漫才を披露している。センターマイクに恋する女の子を演じていたり、ナンセンスな言葉遊びを詩的に表現したりする。それらは未完成だが新鮮な漫才で、従来の女性芸人が披露してきたあるあるネタや容姿をいじるネタとはかけ離れている。そして彼女たちが憧れるのが、Aマッソである。

 24歳の女性ファンはこう話す。

 「私も漫才をやってみたいと考えていた時期があります。だけど、女性芸人はブスとかエロとかそういう〝女性性〟を売りにすることを求められる。そういうニーズに応えることは私には無理だなと感じて挑戦しませんでした。だけれども、Aマッソさんはそういった〝女性性〟を売りにしていない。ネタの面白さだけを追求しているからかっこいい。そういうお二人に憧れて芸人になろうと思う子たちも増えているのかも」

 要は、Aマッソの台頭によって、女の子たちの間で「女を武器にしないでお笑いができるんだ。それならば私にもできるかもしれない」という機運が出てきているのだ。

拡大村上愛=撮影 平郡政宏(カウンタック写真部) 
 確かにAマッソはブスでもデブといった容姿に特徴はない。奇抜なメイクもせず、シンプルな姿でネタを披露する。その内容はシュールで独創的だ。『M-1グランプリ2017』の敗者復活では「便利な時代に生まれたのに、自然が一番だというやつのところに現れる〝文化に触れな侍〟という旗本」への傾向と対策というユニークな内容の漫才をやった。この時の敗者復活に出場した女性コンビはAマッソだけだ。実力派として知られ、人気若手女性コンビ、ガンバレルーヤも憧れの芸人としてAマッソをあげている。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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