「実話時代」の時代の終わり
2019年07月18日
芸能界の「闇営業」が取りざたされているが、まず「闇営業」と事務所を通さない「直営業」が混在されて使われていることを指摘しておく。「闇営業」は、その現場にヤクザ、および準暴力団(半グレ)が出席しており、そこに金銭の授受があった場合に用いられる。そして、ここまで「闇営業」が問題視されているのは2011年に全国に施行された暴力団排除条例(暴排条例)があるからだ。この条例がなければ、芸能界とヤクザのつながりは半ば公然と認められていた歴史上の事実から、さほど問題にならなかったと思われる。
暴排条例の施行当時、一部の警察上層部は「これで日本からヤクザがいなくなる」と楽観していたが、現場の警察官たちは冷めていた。「誰がヤクザで誰がヤクザでないか、分からない。取り締まりにくくなる」。取材した際、そうこぼしていた組織対策本部の警部補がいた。現場警官と警察官僚の認識がズレているな、と思ったものである。
暴排条例はヤクザの生活権を奪った、と言ってもよい。そのために、元来、準暴力団の「シノギ」であった特殊詐欺にまでヤクザは浸出せざるを得なくなった。食っていくためにはどうのこうの言っていられない、という訳である。ある指定暴力団二次団体幹部の人間に取材したが、「まったくシノギが出来ない。もう振り込み詐欺をやろうと思っている」とコメントしていたことが印象に残っている。
特殊詐欺の被害は「365億8000万円」と警察庁が2019年2月上旬に発表している。減少傾向にあるとは言え、凄まじい数字だ(警視庁HP)。当初は「オレオレ詐欺」と称された新たな犯罪は、準暴力団だけでなくヤクザのシノギにまでなった結果、被害額が増加されていったとも言える。
暴排条例はこういった犯罪史や芸能界だけでなく、表現や言論を商とする業界にも多大な影響をもたらした。Vシネマではヤクザを扱う題材が多かった。現役のヤクザがエキストラで出演したり、脚本や演出にたずさわってもいた。が、暴排条例施行後、こういった事はなくなっていった。
暴排条例に打撃を受けた雑誌に、ヤクザ情報誌という「ジャンル」がある。代表的なものとして「実話時代」「実話時代BULL」などが挙げられる。少しマイルドなものとして「アサヒ芸能」「週刊大衆」。が、後者二誌はヤクザ専門誌ではないので、除外する。ここではヤクザ専門誌(ヤクザ情報誌)という特殊なジャンルを取り上げたい(「実話時代」「実話時代BULL」「実話ドキュメント」など)。ヤクザ情報誌はテーマをヤクザに特化した専門誌である。
内容は、例えばカラーページで「六代目山口組直系組長の素顔」や「住吉会義理場の模様」など本物のヤクザが堂々と登場。記事ページでは「ヤクザの親分のインタビュー」「現役若手ヤクザの連載」「刑務所内の待遇」などヤクザにかかわるテーマをこれでもかばかりと
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