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警察が安倍首相の演説をヤジった人を排除したわけ

北海道警察の行為は「違法」。元道警警視長が緊急苦言!

原田宏二 警察ジャーナリスト 元北海道警察警視長

拡大自民党総裁選最終日、安倍晋三首相の街頭演説中に「安倍辞めろ」の大合唱が広がった=2018年9月19日、東京・秋葉原

「現行犯逮捕」でなければ何なのか

 私も動画と写真で確認した。

 「安倍やめろ」のヤジは、一国の総理に対する言葉としては無礼かも知れない。しかし、選挙演説にはヤジはつきものだ。この程度のヤジが自由妨害にあたる行為とはとても思えない。

 写真、動画で見る限りは、数人の男性が抱えるようにして取り囲み、自由を拘束している状況が明らかに見られる。これは自由を拘束しているのだから、私はてっきり「現行犯逮捕した」と思った。

 しかし、どうやら現行犯逮捕ではなかったようだ。逮捕ではないとしたら何なのか。

 考えられるのは、警察官職務執行法5条の「犯罪の予防及び制止」だ。「警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞(おそれ)があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる」とある。

 道警警備部の「『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」という説明は「犯罪の予防のために警告した」という意味なのかもしれないが、声かけの内容は判然としない。

 では、自由を拘束する行為は何か。強いていえば犯罪の制止だろう。

 しかし、犯罪の制止は、「人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞(おそれ)があって急を要する場合」が条件だ。この現場にそうした状況があったとは思われない。

 今回、警察のやった排除行為は法律的な根拠を欠く違法な行為ではないかというのが私の結論だ。

 道警は批判が高まるなか、「公選法違反のおそれ」との説明を「事実確認中」と変えた。

 道警は7月16日の朝日新聞の取材には「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」と説明していた。西村康稔官房副長官は17日午前の記者会見で今回の問題を問われ、「(警察の対応は)公職選挙法の規定に基づいて適切に判断をされると考えている」と述べた。しかし同日に道警は公選法違反については「事実確認中」と見解を変えた上で、行為の法的な根拠については「個別の法律ではなくトラブル防止のため、現場の警官の判断で動いている」と説明。対応に問題がなかったのかとの質問には「今の時点ではない」と答えた。

 突然の説明変更は理解できないが、道警はおそらく先の説明では対応できないと判断したのだろう。

 警察庁の指摘もあっただろう。「個別の法律ではなく」というのは、道警警備部は、身体を拘束している事実は動画などから否定できない、警察官職執行法5条の制止も緊急状態にないから使えない、つまり、法的な根拠がないことに気が付いたのだろう。

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筆者

原田宏二

原田宏二(はらだ・こうじ) 警察ジャーナリスト 元北海道警察警視長

ジャーナリスト。元・北海道警察釧路方面本部長(警視長)。2004年2月に北海道警察の裏金疑惑を告発。以降、警察改革を訴えて活動中。著書に『警察内部告発者』(講談社)、『警察崩壊』(旬報社)、『警察捜査の正体』(講談社現代新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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