メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

災害大国のわりに準備ができていない国・ニッポン

いざ災害が起きたとき、タイムリーな対応ができるために何をするべきか?

田邑恵子 開発コンサルタント

災害対応で肝心なのは最初の72時間

拡大倒壊した民家に取り残された人を救助する消防と警察の救助隊=2016年4月15日、熊本県益城町
 災害対応は、「初動期」、「応急期」、「復旧期」、「復興期」ごとに検討しなくてはならないことが多々あるが、肝心なのは「最初の72時間が勝負」という事実だ。要するに、72時間の準備を最低限進めておくことで、混乱を防ぎ、救出できる命の可能性は格段と増える。そのためには、行政、民間、支援団体、報道機関、市民が、「命を救うために自らできること」を明確化し、「縦割り」を超えて協力しあうしかない。

 東日本大震災は、その広域度、破壊度、原発事故がもたらした複雑性と、 いずれも「想定」を凌駕(りょうが)していた。あの3・11の光景を前提に考えると、「何から手をつければいいのか」という無力感にすら襲われる。

 しかし、熊本地震、広島土砂災害、北海道胆振東部などの規模の災害はいつ、どこで起きてもおかしくない。無力感にさいなまれる前に、まずは想定される規模の災害に備えることから始めよう。日頃の準備があってはじめて、いざ災害が起きたとき、混乱と無駄を防ぎ、効果的かつタイムリーな支援をすることが可能になるからだ。

IT活用が進む海外の災害の現場

 カギを握るのは、ITだろう。私が現在支援しているシリアでは、ITを活用し、効率的な方法で避難者に関するデータが集められている。

 たとえば、人手を出せる支援団体が「8人出せる」と手を挙げ、共通のアプリを搭載ずみのタブレットを使い、他団体からのスタッフと一緒に、割り当てられた地域の避難者情報、被災状況を集める。集められた情報はネットワークを通じて遠隔にあるデータセンターに送られ、 地図、グラフなどに直ちに加工される。そのデータに基づき、全体のバランスと手元にある支援物資を照らし合わせ、「〇〇地域にはテント50張、トイレ4基、寝具150式」などと決定され、割り当てを受けた各支援団体の倉庫から直接送り込まれる。

 情報収集の方法も進化している。従来はスタッフを送り込み、対面インタビューによりデータを取るのが主流だったが、今では「ドローンを活用した自己申告」による情報収集も始まっている。

 たとえば、プエルトリコではハリケーンが発生した昨年5月、通信大手のAT&T社が携帯ネートワークを提供する小型アンテナを搭載したドローンを飛ばす新たな取り組みを展開した。ドローンを介して、人々は携帯につなぐことができた。

 この携帯ネットワークはオープンで誰もが使用可能。ネットワークに携帯電話をつなげると、「避難者情報を提供することに同意しますか?」という画面が現れる。 同意した人たちが入力したデータはドローン経由でただちに遠隔センターに送られ、「緊急支援を必要とする人たちの位置や人数」をただちに可視化できる。避難者情報が集されれば、どこを優先して救援活動をすべきか、ただちに可視化できる。ドローンが撮影した画像で、被災地の様子をただちに確認することもできる。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

田邑恵子

田邑恵子(たむら・けいこ) 開発コンサルタント

中東・アフリカでの開発支援や紛争地復興に20年携わり、国連、JICA、国際NGOにて緊急下での子どもの保護、障害のある方の支援、防災・減災に取り組む。現在は中東を拠点にシリア支援、人道支援団体の能力育成を中心に活動している。報告書、イベント開催、メディア制作物(TV番組、ドキュメンタリー映画)を通じてのアドボカシーも展開。「急務だが誰も手をつけていない課題の掘り起こし」をライフワークに、東日本大震災と熊本地震後に日本国内の災害対応調査を実施。 様々な組織、専門家を「つなぐ」仕組み作りに力を注いでいる。London School of Economics and Political Science大学院卒。Vulnerability Multiplied in Syria : Report on the Survivors of Explosive Devices(難民を助ける会)、「災害と闘う」(セーブ・ザ・チルドレン)ドキュメンタリー制作