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[31]デジタルタトゥーに阻まれる生活再建

「信用スコア社会」の新たな貧困とは?

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

最も影響力が大きい犯罪歴のデジタルタトゥー

 私は前述の若者がネット上に自分の痕跡が残るのを恐れて、路上販売の仕事をできなくなっていたように、デジタルタトゥー問題がさまざまな点で国内の生活困窮者支援にマイナスの影響を与えつつある、と危惧している。

 最も影響力の大きいデジタルタトゥーは、犯罪歴である。

 近年、生活困窮者支援の現場では、ホームレスの人が生活保護を申請して施設に入ったものの、アパートに移る段になって、ネットに過去の犯罪歴が残っていることがネックになり、部屋探しに苦労する、という話は珍しくない。部屋探しが難しくなるのは、家賃保証会社の審査に落とされるからだ。犯罪自体は軽微なものであったとしても、ネットに名前が残っていれば、不利に働くことになる。

 都市部では、アパート入居時に個人の保証人を立てるのではなく、家賃保証会社を利用するのが一般的になっている。家賃保証会社の保証料は2年間で家賃の半額程度が一般的であり、その費用は入居者負担となっている。

 入居希望者は家賃保証会社の利用を申し込むため、申込書に勤務先などの個人情報を記載して、不動産業者に提出する。不動産業者は代理で申請書を家賃保証会社にファクスするが、信用度が低いと判断されると、審査に落とされてしまう。

 そのため、不動産業者によっては数社の家賃保証会社と連携をして、1社の審査に落とされても、すぐに別の家賃保証会社の審査を申し込み、通してくれるところが出てくるまで探すという対応をしている会社もある。

 しかし、何社に申し込んでも審査に落とされる人もいる。家賃保証会社はどういう基準で審査をしているのか、教えてくれないので、審査のプロセスは闇の中なのだが、今回、私は都内の家賃保証会社に派遣社員として働いていた経験のある30代の男性に話を聞くことができた。

 彼の業務は、不動産業者から送られてきたファクスの内容をもとに審査の材料となる資料を集めて、審査担当の社員に渡すことだった。

 「まず最初にやるのが、Googleなどの検索サイトで申込者の名前と、スペースを1文字空けて、『逮捕』または『容疑』と打ち込むことです。過去のニュースや『5ちゃんねる』(掲示板サイト)等で名前がひっかかると、それを社員に伝えます。」

 彼は3カ月しか、その職場で働いていなかったが、

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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