西山良太郎(にしやま・りょうたろう) 朝日新聞論説委員
1984年朝日新聞社入社。西部(福岡)、大阪、東京の各本社でスポーツを担当。大相撲やプロ野球、ラグビーなどのほか、夏冬の五輪を取材してきた。現在はスポーツの社説を中心に執筆。高校では野球部、大学時代はラグビー部員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
多様性社会のショーケース
いまも記憶に鮮やかな、前回、2015年のW杯。この時、日本代表には10人の外国出身選手がいた。
世界ランク13位の日本は、過去2回優勝している世界ランク3位の南アフリカと初戦で対戦した。第2回大会で初勝利をあげた以降は二つの引き分けを入れて18試合勝利がなかった。日本が善戦することはあっても、南アフリカの勝利は揺るがない。それが戦前の評判だった。
だが、ホイッスルが鳴ると試合の様相は違った。日本は相手のひざ下へ突き刺さるタックルを繰り返す。攻めても球は蹴らず、ミスなくつなぐ精密さと豊富な運動量でラグビー界の巨人に対抗し続けた。
手に汗にぎる熱戦は試合終了直前、流れるようなパス攻撃で、劇的な逆転トライ。「W杯史上最大の番狂わせ」と呼ばれる勝利を日本がもぎとった。
それから2日後、もう一つ記憶に残る出来事があった。
勝利の主役の一人としてもてはやされたフルバックの五郎丸歩選手(33)が書き込んだツイートだ。そのつぶやきを引用する。
「ラグビーが注目されている今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ」
シンプルだが、ラガーマンの立ち位置を明確に示すメッセージだった。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?