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ペットの室内飼い 世界の常識ではない!

「動物にはその動物本来の本能や自由がある」 世界の潮流をNZで聞きました

梶原葉月 Pet Lovers Meeting代表、立教大学社会福祉研究所研究員

NZで人間の奴隷状態からの解放を議論

 動物の権利を当然のことと考える研究者たちが集う学会が、2019年7月1日から4日間、ニュージーランドのクライストチャーチであった。実は私はそこで発表するためにこの国に来ていたのだ。

 Australasian Animal Studies Association(AASA)というところが主催する学会で、今回の大きなテーマは「Decolonizing Animals」だった。言い方は難しいけれど、colonizeが「植民地化する」という意味なので、deがついているから直訳すれば「脱植民地化」あるいは「非植民化」ということだ。

 この言葉には、捕鯨や商業的な動物の大規模飼育や実験動物だけでなく、動物園や水族館から個人が飼育するペットにいたるまで、あらゆる動物の権利の侵害と支配を終わらせる、つまり奴隷状態の動物たちをいかに脱植民地化させるか……を考えていこうという意味が込められている。

 学者だけでなく、活動家やボランティアにも門戸が開かれたオープンな学会であり、世界から120人あまりが集まり、発表と講演を行った。

ペットと社会3拡大Roman Samokhin/shutterstock.com

家猫が自由に外出して狩りをするのは倫理的に正しいのか?

 ユニークな発表が目白押しだったが、特に印象的だったのはオーストラリアで、キツネやディンゴ(オーストラリア固有の野生犬)の保護活動を行うチャーリー・ジャクソン−マーティン氏の話と、ニュージーランドの大学講師ニコラス・ホルム博士の家猫が外で行う狩猟活動の倫理を問う発表だった。ディンゴは犬の仲間ではなく、生物分類学上独自の種であるとの研究もあり、議論が続いている。

 ジャクソン−マーティン氏によれば、彼が活動するオーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州では、様々な在来種動物の保護と酪農の被害を減らすために、害獣駆除法(2014年)が作られ、キツネの保護は違法扱いにされてしまったという。キツネはそもそも、185年前にネズミの駆除のためオーストラリアに連れてこられた。それが今度は、産業に被害を与えるということで「極端に制度化された暴力」(駆除)にさらされているという主張だ。キツネが生態系を壊すというなら「集約的な農業こそが環境を破壊しているのだが、誰もそのことは指摘しようとしない」と、ジャクソン−マーティン氏は憤っていた。(Sydney Fox and Dingo Rescue

 日本では、寄生虫のエキノコックスの感染源ということで、接触してはいけないと言われているキツネだが、彼とパートナーが一緒に暮らしているキツネの写真はとても可愛くて驚かされる!

ペットと社会3拡大キツネと暮らすジャクソン−マーティン氏。もちろん寄生虫の駆除、予防注射はきちんとしている=筆者提供

 ニュージーランド政府も固有の動植物を保護のため、「プレデターフリー2050」というプログラムを導入して、2050年までに外来種の根絶を目指している。

 ニュージーランドの在来の鳥や小動物を狙う外来のプレデター(捕食者)を全て駆除しようとしているが、幸い猫はコンパニオンアニマルなので、このプログラムからは除外されている。しかし、猫が野生生物に与える悪影響を軽減することに特化した国家猫管理戦略(National Cat Management Strategy)というのもある。

ペットと社会3拡大窓から出かけていくホルムズ博士の猫アルテミス=ホルムズ博士提供
 ニュージーランドのマッセー大学上級講師ニコラス・ホルム博士は、猫が家庭に飼われていながら、家の内外を自由に出入りして狩りをする(他の動物を殺す)ことが、倫理的にどう位置付けられるかを考察していた。

 つまり、家に帰ればキャットフードがもらえるのに、猫が外で小動物を殺すのは、現代の人間が楽しみのために狩りをするのと同じように、不必要で不自然な行為なのか? 猫を人間社会のルールで拘束し、猫の狩猟行動を、環境を破壊する不自然な悪い行為であると決めて制限することは倫理的に正しいのか?

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筆者

梶原葉月

梶原葉月(かじわら・はづき) Pet Lovers Meeting代表、立教大学社会福祉研究所研究員

1964年東京都生まれ。89年より小説家、ジャーナリスト。99年からペットを亡くした飼い主のための自助グループ「Pet Lovers Meeting」代表。2018年、立教大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。近著『災害とコンパニオンアニマルの社会学:批判的実在論とHuman-Animal Studiesで読み解く東日本大震災』。立教大学社会学部兼任講師、日本獣医生命科学大学非常勤講師。

梶原葉月さんの公式サイト

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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