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豊島岡女子の高校募集廃止と教育格差/下

「古き良き都立女子高」のような校風は、完全中高一貫化でも維持できるのか

杉浦由美子 ノンフィクションライター

拡大中学受験の入試に臨む子どもたち
 

豊島岡女子の高校募集廃止と教育格差/上

 2回に分けて、豊島岡女子学園中学高等学校の高校募集停止について言及している。前回は、豊島岡高校募集廃止がどう教育界に影響を及ぼすかについて書いた。今回は豊島岡という女子校がどう変わっていくかについて考えたい。

御三家の「滑り止め」から難関校へ脱皮できるか

 高校募集を廃止した豊島岡は今後どうなるのだろうか。

「中学入試で入った生徒を6年間かけ手塩にかけて育てていくということになるのでしょう。今後はますます東大と国立医学部への合格を念頭におくようになるはず」(中学受験対策企業関係者)

 この話を聞き、私は6年ほど前の取材を思い出した。

 当時、豊島岡は進学校から難関校への転換点にあると大手塾の関係者から聞いたのだ。まず、進学校と難関校のカリキュラムはどう違うか説明しよう。進学校は宿題や小テストが多く、管理し、受験勉強をする。しかし、難関校は受験対策よりも、違うことを教育する。たとえば、男子校御三家の一角、武蔵高等学校中学は典型的な難関校カリキュラムだ。博士号を持つ研究者たちが大学レベルの授業をやる。それらは大学入試に直結はしないが、将来役に立つ教養や知識となる。豊島岡は毎日のように小テストを行う進学校のカリキュラムでありながら、若手の優秀な研究者を採用して、自由に授業をさせる試みをしていた。

 つまり、進学校のカリキュラムに難関校の内容が入っていた。受験対策だけではなく、もっと奥深い教養や知識を教えていきたいと考え、将来は課題や小テストを減らしても進学実績を出せる難関校を目指していたようにみえた。中学受験の女子御三家・・・桜蔭、女子学院、雙葉の「滑り止め」から、御三家を凌駕する学校へ進化をとげたいと考えていたのかもしれない。

 しかし、2015年のサンデーショック・・・御三家の受験日が集中する2月1日が日曜日になることをさす。プロテスタント校の女子学院は日曜日に受験を実施しないので、次の日の2日が受験日となるから「ショック」なのだ。そのため、女子学院と豊島と同日に受験日となったが、結果偏差値は女子学院が上だったのである。要は首都圏の中高一貫の女子校は桜蔭、女子学院がツートップであることは変化がない。
2019年現在も桜蔭や女子学院の滑り止めであり、課題や小テストが多い管理教育のカリキュラムになっている。また、豊島岡の繰り上げ合格者のラインが下がってきているという話も中学受験産業の関係者から聞く。

 「豊島岡はもう何年も伸び悩みといわれていますが、実際は、下降気味とすら感じられますね」(中学受験大手塾講師)

 ここにきて、豊島岡は伸び悩みの時期にきており、打開策として、高校入試廃止を決定したのかもしれない。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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