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飲み会=飲み放題コースだけじゃない

イッキ飲み、コールの飲み会……。「たくさん飲むのがかっこいい」わけじゃない!

東成樹 ライター

 デフレ時代の飲み会は、会社でも、大学のサークルやクラスでも、飲み放題付きのコースが定番だ。インターネットのグルメサイトできれいに並べられた料理の写真を見て予約する。ただ、お酒の量より、おいしい食事を仲間と楽しみたいと考える人たちも少しずつ増えてきたようだ。「イッキ飲み」など飲酒の強要による事故やパワハラに対する認識が社会で厳しくなってきたからかもしれない。今から7年前、大学生時代に仲間と「ごちそう会」を始めた東成樹さん(29)が、飲み会=飲み放題コースだけじゃないと考える理由を寄稿してくれた。(論座編集部)
【ごちそう会】(ごち会)は、東さんが大学4年生の時、仲間と立ち上げたプロジェクト。飲み会で同じ金額を払うなら、おいしい食事をしっかり食べて、良いお酒を大切に味わいたいという想いから生まれた。「自慢の料理+おすすめの(お酒など)2杯」のコースメニューを提供してくれる飲食店を開拓し、サイトに掲載して、おいしい料理・ドリンクが予約できるようにした。現在は、学生街がある本郷、高田馬場、早稲田、渋谷、下北沢、明大前、国立で協力してくれる飲食店が表示されている。

飲み放題コースの飲み会に違和感

 私は大学生の時、サークルやクラスの飲み会が苦手でした。「飲み放題」のコースでは、おいしいご飯がなかなか食べられなかったからです。味付けの濃い料理や揚げ物が多く、野菜たっぷりだった家族との夕食とは別物でした。

 グルメサイトでコース写真を見ると、大量に料理が並んでいます。しかし、実際に行ってみると1人分の量が少なかった、ということはありませんか。大学生にとって貴重な3000円を払ったコースで、お腹がすくとがっかりします。「飲んだ後で、ラーメンを食べればいいじゃないか」という意見もあるかもしれません。でも、それでさらにお金を払うのは疑問でした。ラーメンも含めて4000円ほど払うのなら、もっと充実したコースが予約できると思うからです。他にも「飲み会の前に、コンビニで軽く食べて腹ごしらえすればいい」という人もいますが、そもそも満足できないコースを予約することに違和感を覚えていました。周りの友だちに相談すると「交流の場にお金を払っているから、しょうがない」と言われました。でも、本当にしょうがないのでしょうか……。

 一方、飲食店側に立てば「飲み放題」を付けている以上、料理やドリンクの質にこだわるのは難しくなります。結果として、大学生が一般的に払う3000円程度のコース料金では、めったにおいしいものと巡り合えないのが現実です。

 私が初めて飲み会に参加した時、イッキ飲みコールが沸き起こり、ピッチャーを持ち抱えた男性がビールを流し込んで、みんなが拍手していました。それをきっかけに、私は「お酒を酔うための液体として飲む」コミュニティーからは離れるようになりました。

 「ちゃんとした店を選べばいいじゃないか」「おいしい飲み放題もあるぞ」と思われる人もいるかもしれません。私もそう思い、機会があれば幹事を引き受けてお店を探しました。ただ、大学生のお財布の範囲では、大勢が集まれて、おいしいコース料理が楽しめるお店を探すのは困難でした。それで「お腹が空いたな」と思って帰ることが多く、問題意識はふくらんでいきました。かといって、自分だけ飲み会に行かずに一人で食べる、というのは避けたいと思っていました。仲間と、ご飯を食べてゆっくり話したかったからです。

 「だったらコースじゃなくて、アラカルトにすればいい」という選択もあるでしょう。少人数で行く時はそのようなお店を選びましたが、サークルやクラスなどの大人数でお店を予約する際は、全員一律のお金・コースでないと、お店も幹事も大変なのです。

 結局、飲み放題コースしかないのだから。どうすれば、いいお店、いいコースで仲間と交流できるだろうか? この課題意識が、プロジェクトを始めたきっかけです。

新しい飲み会を提案する

 ある日、お昼に友人とフレンチを食べました。そのおいしかったこと。ドルチェがつき、1500円でした。

 「飲み会にいくら払っているだろう?」と疑問に思い、「いつもの飲み放題のお金で、もっとおいしいコースが楽しめるはずだ」と実感しました。

 そこで幹事になった時に、お食事しっかり、飲み物は数杯の会を開きました。

 20人が集まりました。内心、いつも飲む友だちが不満ではないか、とてもとても怖かったです。いつもたくさん飲んでいたので、我慢しているんじゃないかと。でも、彼は僕の肩をたたいて「おいしいよ」と言ってくれました。

ごち会拡大manabu.sakamoto

 飲み会の幹事は「参加者から文句が出る」ことを恐れるものです。そのため、参加者に怒られない選択をしがちです。でも、勇気を出して新しいコースを提案してみたら、お酒好きの人も評価してくれました。この経験で勇気をもらった私は、友人を集めて飲み会への想いを話してみました。そして賛同する仲間と一緒にこのプロジェクトを始めました。

飲食店との信頼できる関係づくり

 コースをつくるにあたり、まず大事なことは、信頼できるお店を見つけることです。そこで、自分たちで100店以上のお店をめぐりました。メンバーと一緒に食べてみて、「また来たいかな?」「ここで会を開きたいかな?」と考え、心からおすすめできると思ったときに、店長さんに話しかけて想いを話します。コンセプトにご共感いただけた時だけ、一緒にコース料理を考えます。コースで気をつけているのは「そのお店一推しのメニューを入れること」。お店に取材したり、自分たちのお金で料理・ドリンクを味わったりしながら、お店と一緒にオリジナルのコースを考えます。こうして「自慢の料理+おすすめの2杯」の「ごち会コース」が誕生しました。2012年の冬、3店舗からのスタートでした。

ごち会(1)拡大これがコース1人分の写真。2012年当初からの掲載店「デ サリータ」(渋谷)。トリュフのホワイトクリームパスタや世界中のワインなどが楽しめて、2980円。(社会人は3500円)=東成樹さん提供

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筆者

東成樹

東成樹(ひがし・なるき) ライター

大学生の時、「ごちそう会」をを創設。料理・お酒とのおいしい出会いを生み出して、飲み放題に代わる新たな飲み会の形を提案する。趣旨に賛同してくれる飲食店の「自慢の料理+おすすめの(お酒など)2杯」のコースメニューをサイトに掲載し、予約できるようにした。普段は、アートや宇宙、スタートアップなど幅広い範囲で取材・編集を行なっている。