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はたらくくるまと表現の不自由

匿名による数に任せた抑圧をもう放置してはいけない

赤木智弘 フリーライター

『はじめてのはたらくくるま 英語つき』(講談社)は29ページのうち6ページが自衛隊に割かれ、潜水艦や対潜哨戒機など「くるま」でない写真も掲載された

ネット住民の嚙み付き方

 2018年11月に講談社ビーシーが編集する子供用の図鑑『はじめてのはたらくくるま 英語つき』に、戦車や戦闘機、潜水艦などの兵器が掲載されているのは問題があると、新日本婦人の会が講談社ビーシー側に申し入れた。

 この申し入れを受けて、講談社ビーシー側は、知育図鑑として適切な表現や情報ではなかった点があると認め、以降の増刷を行わないことを発表した。

 『はじめてのはたらくくるま』という名前と表紙だけを見れば、パトカーや救急車。バスやタクシー、建設重機などが載っていると考えるのが普通である。これに兵器が出てくれば、当然、騙し打ちの感がある。ましてやなぜ車ではない、潜水艦や戦闘機が掲載されているのだろうか? 

 もちろん、中身を確認しておけばいいだけの話ではあるのだが、最近はAmazonなどのネットを通して表紙だけしか見ないで本を買うことも多い。表紙だけを見ると、隊員を乗せた自衛隊用車両が掲載されているが、これはあくまでも車。この流れで同じ自衛隊であっても、車ですら無い潜水艦や戦闘機まで掲載されるとなると、無理やり掲載した感があまりにも強い。

 さて、話し合いの結果を見ると、講談社ビーシー側は「増刷を行わない」ことを決めたという。絶版にするとかリコールにするとかという話ではないので、話し合いは比較的穏当に終わったと思われる。

 本来であればこれで終わりであり、特に何があるという話ではないはずだったのだが、この話し合いの結果に噛み付いてきた人達がいる。それがネットの住民たちだ。

 ネットの住民たちは、この結果に対して「新日本婦人の会という共産党の下部組織が、講談社にカチコミをかけた!」「新日本婦人の会の活動は、自衛隊に対する職業差別だ!」などと騒ぎ出したのである。

 また、中には「新日本婦人の会が表現の自由を踏みにじった!」と主張する人たちもいた。彼らは新日本婦人の会のアカウントにコメントを送ったり、中には電話番号を掲示する人たちもいた。こうした反発に対し、新日本婦人の会は事実を歪める悪質な内容がネットで拡散されているとして抗議し、法的措置を検討しているという声明を出している。

 気になるのは、新日本婦人の会の活動と、それを批判している人たちの「やり方」の差異だ。

団体が対話を要求するのは「圧力をかけるためのやり方」ではない

『はじめてのはたらくくるま 英語つき』(講談社)
 新日本婦人の会側は、団体として講談社ビーシー側に問題点を指摘、対話の末「今後の増刷はしない」という合意を引き出した。会社組織と団体。お互いが1対1で話し合い、解決を探る。実にまっとうなやり方である。

 ところが、新日本婦人の会を批判する人たちには、その意見を取りまとめる団体はない。個人がバラバラに動いている。議論を呼びかけるものもあれば、「クソリプ」と呼ばれる単なる誹謗中傷もある。それらが何百、何千と送りつけられる。これでは対話も成り立たない。

 僕自身もまれに

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