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警察署長を務めた私にも見えない公安警察の素顔

「警察が安倍首相の演説をヤジった人を排除したわけ」続編(1)

原田宏二 警察ジャーナリスト 元北海道警察警視長

警察は政治的中立ではありえない

拡大警察庁が入る中央合同庁舎第2号館=東京都千代田区

 警察は日ごろから政治家にまつわる公私にわたる様々な情報を得ている。公になれば、その政治家の政治生命が失われかねないスキャンダル情報もある。

 公選法違反の情報も事件として立件送致するのはごくごく一部に過ぎない。脛に傷もつ政治家にはこうした情報を握る警察は恐ろしい存在だろう。

 警察は政治的に中立ではありえないことは前回記事『警察が安倍首相の演説をヤジった人を排除したわけ』でも説明した。国家公安委員長も安倍首相が任命した大臣だ。

 道警は現在、首相演説ヤジ排除について確認した結果を公表していない。

 このヤジが公選法違反になるかどうかは、道警本部の刑事部捜査第2課の選挙違反捜査の法令担当に照会すればたちどころに回答が出る。道警で心配なら警察庁刑事局捜査第2課に聞けばよい。

 私が山梨県警察、熊本県警察の捜査第2課長を務めた当時には、警察庁の捜査第2課に“選挙の神様”と呼ばれていた人物がいた。

 「個別の法律ではなく、現場の警察官の判断」に至っては意味不明だ。警察官の強制力の行使には必ず法的な根拠が必要だし、警察官は組織の一員として上司の指示を受けて職務執行に当たるのが鉄則だ。

 警察は不祥事があると隠ぺいしようとし、隠しきれないとなるといつも現場の警察官に責任を押し付ける。これも警察の悪い癖だ。

 世論は熱しやすく冷めやすい。市民も道警の安倍首相ヤジ問題などはすぐ忘れる。マスコミもこれ以上は深追いしない。さらにマスコミに追及させないようするには日常の道警取材を拒否して記者を締め上げればいい――。

 おそらく、そんなふうに考えている。

 伝えられるところでは、この問題で東京都の男性が特別公務員職権濫用罪等で警察官を札幌地検に告発したようだ。地検が捜査を開始すれば、捜査中を理由にだんまりを決め込めばいい。

 道警はこうした考えで時間稼ぎをしているのだ。

 この予想は見事に的中した。8月6日の道議会総務委員会で民主党・道民連合の山根理広道議が「なぜ(確認に)時間がかかっているのか」と質問したのに対し、山岸直人道警本部長は「現場でのトラブル防止の観点から措置を講じたが、本件に関する告発状が札幌地検に提出されたと承知しており、これ以上のお答えは差し控える」と述べた。

 山根道議が「トラブル防止の観点から措置を講じたと断言したが、それは警察官職務執行法のどの条項にあてはまるのか」と再び尋ねたところ、原口淳警備部長は「本件に関する告発状が札幌地検に提出されたと承知しており、これ以上のお答えは差し控える」と山岸本部長と同じ答弁を繰り返した。

 その後も道警側は「できるだけ早く必要な説明をする」とする一方で「告発状が出ているので差し控える」という答弁を繰り返した。(8月6日HTBニュース)

 この日、道警本部長とともに総務委員会に出席した北海道公安委員会の小林ヒサヨ委員長は「警察の職務執行の中立性に疑念を抱かれたことは残念」と述べた。(8月7日朝日新聞)

 告発状を札幌地検が正式に受理したかどうかは定かではないが、仮に受理したとしても警察と同じ穴のムジナの検察庁が警察官を被疑者とする事件をまともに捜査し起訴する可能性は皆無に近い。捜査したとしてもいつ終わるともしれない。しかも、地検がその結果を公表するわけもない。

 警察はこれまでも自らに都合が悪い問題には「捜査上の支障」を理由に真実を隠し、情報開示を拒んできた。裏金システムが発覚したときもそうだった。市民に率直に謝らない。隠ぺい体質と謝罪しない体質、それが警察の最大の特徴だ。

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筆者

原田宏二

原田宏二(はらだ・こうじ) 警察ジャーナリスト 元北海道警察警視長

ジャーナリスト。元・北海道警察釧路方面本部長(警視長)。2004年2月に北海道警察の裏金疑惑を告発。以降、警察改革を訴えて活動中。著書に『警察内部告発者』(講談社)、『警察崩壊』(旬報社)、『警察捜査の正体』(講談社現代新書)など。

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