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警察記者クラブへの疑問と記者への期待(上)

「警察が安倍首相の演説をヤジった人を排除したわけ」続編(2)

原田宏二 警察ジャーナリスト 元北海道警察警視長

拡大道警ヤジ排除問題について、北海道議会総務委員会で答弁する山岸直人・道警本部長=2019年8月6日、札幌市

「選挙の公正さを守るため報道を控えた」は言い訳だ

 安倍晋三首相が札幌市内で選挙演説した際にヤジを飛ばした市民が北海道警に排除された問題を受けて、前回記事『警察署長を務めた私にも見えない公安警察の素顔』では、排除にあたったとみられる警備・公安警察の実態を論じた。

 今回は警察権力をチェックするべき立場にあるマスコミについて考察し、警察記者クラブの機能不全が「警察の横暴」の大きな要因であることを示したい。

 警察を監視する機関としては公安委員会や議会、監査委員などがある。それ以上に警察を日常的に近くで見ているのがマスコミだ。

 新聞やテレビで犯罪に関する報道が流れない日は滅多にない。犯罪記事の情報の多くは、警察記者クラブ加盟のマスコミに提供される。記事の多くは「警察によると」とか「○○署への取材で」で始まるのはそのためだ。

 報道の自由、言論の自由を含む政府からの表現の自由は民主主義の根幹であり、近代憲法の中で共通の原理として保障されている。その主要な役割には「権力の監視」があるとされ、報道のルールを業界で自主的に策定している。

 新聞は「新聞倫理綱領」、公共放送NHK(日本放送協会)は「国内番組基準」、民間放送は「日本民間放送連盟放送基準」がある。出版業界でも「出版倫理綱領」がある。

 公職選挙法は報道の自由について、こう定めている。148条(新聞紙、雑誌の報道及び論評の自由)には「この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定は、新聞紙又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載する自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」。

 テレビやラジオについては151条の3(選挙放送の番組編集の自由)「この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定は、日本放送協会又は基幹放送事業者が行なう選挙に関する報道又は評論について放送法の規定に従い放送番組を編集する自由を妨げるものではない。ただし、虚偽の事項を放送し又は事実をゆがめて放送する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」だ。

 今回の安倍演説ヤジ排除問題を最初に報じたのは朝日新聞だった。今ではテレビ局も地元北海道新聞の報道も盛り上がりを見せているが、最初は朝日新聞に後れを取った。NHKや読売新聞は当初は一切報じなかった。

 安倍首相演説ヤジ排除問題を報じることが公選法148条・151条の3但し書きにある選挙の公正を害することにあたるとマスコミ各社が判断したのなら全くおかしい。それは記者たちの目の前で起きた事実であり、虚偽でも歪曲でもなかったからだ。

 選挙の公正さを守るために報道を控えたというのは単なる言い訳に過ぎない。今回の安倍首相演説ヤジ排除問題でドジったのは表面上は道警だ。

 しかし、そのバックには、警察庁がいて、我が国の最高権力者総理大臣がいる。

 果たして、それぞれの新聞やテレビは「権力の監視」の役割を果たしたのか。報道の自由を守ったのか。

 今回の問題でマスコミがどんな報道をしたのか確認してみよう。

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筆者

原田宏二

原田宏二(はらだ・こうじ) 警察ジャーナリスト 元北海道警察警視長

ジャーナリスト。元・北海道警察釧路方面本部長(警視長)。2004年2月に北海道警察の裏金疑惑を告発。以降、警察改革を訴えて活動中。著書に『警察内部告発者』(講談社)、『警察崩壊』(旬報社)、『警察捜査の正体』(講談社現代新書)など。

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