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虐待事件を繰り返さないために私たちができること

子どもへの暴力防止プログラムのワークショップを学校に提供してきたからわかること

阿部真紀 認定NPO法人エンパワメントかながわ理事長

虐待の被害について語り始める子どもたち

 CAPでは、クラス内でのワークショップを実施した後、必ずトークタイムという個別対応する時間を設ける。トークタイムで、CAPのスタッフに対し、子どもたちが今までは誰にも話すことができなかった家庭での暴力、つまり虐待の被害について語り始めることがある。

 「もし、知らない人に声をかけられて、お家まで逃げて帰っても、お家に誰もいなかったらどうしたらいいの?」

 1年生の女子がスタッフに漠然とした不安を話しているうちに、家庭の中に保護者が不在であること、夜遅くまでひとりで待たされていること、つまりネグレクトの状況が発覚する。

虐待を防ぐには拡大CAPを受けた子どもの感想=エンパワメントかながわ提供

 ワークショップの冒頭で「安心なんて、どこにもない」と大きな声で反応した4年生の男子。日頃は周りの子にちょっかいを出してはトラブルを起こす困った子だと先生から聞いていたが、その子は毎日のように父親が母親に暴力を振るう面前DV(心理的虐待)の状況をトークタイムで語りだす。

 トークタイムが始まると同時に、スタッフに駆け寄り、「今ね、劇でやったこと、私もあるの」と語り始める3年生の女子。「さっきの親戚のお兄さんがキスをした話?」と聞き返すと、 「そう、でも親戚でなくて、本当のお兄さんなんだけど、嫌な触り方をしてきて誰にも言っちゃダメだと言われてる」と性虐待を告白した。

 今まで誰にも話してこなかった虐待の被害を、たった60分間のワークショップを提供したCAPスタッフに語り始める。こんなことが年に何回かある。

 CAPのスタッフは、「話してくれてありがとう。あなたは決して悪くない」と伝え、これまでその子が抱えてきた気持ちを聴き続ける。しかし、それが虐待である以上、気持ちを聴いて終わりにするわけにはいかない。そのことを他の大人に伝える必要があることを伝え、学校側に助けを求めることに子どもから承諾を取る。

 「あなたの権利が奪われているということだね。あなたの安心・自信・自由の権利を守るために、他の大人にも助けてもらってほしい」

虐待を防ぐには拡大CAPを受けた子どもの感想=エンパワメントかながわ提供

 時として「絶対に他の人には言わないで」と子どもに言われることがある。そんな時は、「どうして、他の人に話しては困るのか?」を尋ねることにしている。

 「お母さんが大変なことになる」「どこかに連れていかれてしまう」「家族が離れ離れになってしまう」など、子どもの不安を聞き取ることで家庭の中の様子が見えてくる。今後の介入のヒントを得ることもできる。

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筆者

阿部真紀

阿部真紀(あべ・まき) 認定NPO法人エンパワメントかながわ理事長

上智大学文学部卒。1999年よりCAPスペシャリスト。2004年エンパワメントかながわを設立。デートDVを予防することでDVや虐待の連鎖を断ち切ることを目指し、全国の団体や機関がつながることを呼びかけ、2018年デートDV防止全国ネットワーク設立。同NPO法人事務局長を兼務。著書に「暴力を受けていい人はひとりもいない」(高文研)。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです