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[32]五輪まで1年、路上生活者はどこへ?

都市再開発で追われる人々

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

池袋西口公園から消えた路上生活者

 当時、池袋西口公園には数名の路上生活者が暮らしていた。

 2018年7月17日、豊島区議会の豊島副都心開発調査特別委員会で、高野之夫区長は言葉を慎重に選びながらも、以下のような表現で路上生活者を追い出したことを事実上、認めている。

 「今回の公園の大改修にかけては、発言がありましたけれども、ホームレスの問題、これらについても、なかなか人権の問題、あるいは人に迷惑をかけていないとか、いろんな課題があって、なかなか排除というのは難しいということで、ずっとできなかった」

 「急遽、ラ・フォル・ジュルネの前の日に、警察当局をはじめ、地元の方々、それらを含めて、ここにやはりお住みになるのは違法でありますというような形の中で、手続きをとりながら、(中略)この機会に、やはり池袋の駅前の顔ですから、それは無理を言ってでも変えていかなければいけないということで、当局等々も含めて、地元の方も本当に大勢参加して、このような形をとらせていただいて、それから多少見受けられますけれども、前から比べると、ずっと変わってきていますよね。粘り強く、これも警察当局とやっておりますけれども、やはり、この西口公園は、池袋に来る方々のまず第一印象のところでありますので、これは、そういう面で進めていきたいと思っております」

 また、同日の同じ委員会で、豊島区の公園計画特命担当課長は、今後、池袋西口公園をホームレス対策として夜間閉鎖することを検討していると答弁している。

拡大池袋西口公園では、現在、「グローバルリング」を建設するためのフェンスが設置されている

 池袋西口公園にいた路上生活者はどこに行ったのだろうか。長年、池袋で路上生活者支援を続けているNPO法人TENOHASI事務局長の清野賢司さんにうかがった。

 清野さんによると、池袋西口公園にはかつて10人以上の路上生活者が寝泊まりをしていたという。昨年5月の時点でも数人が野宿をしていて、その中核は5人のグループだったとのことだ。

 「去年のゴールデンウィークの時、区長や公園緑地課長が警察と一緒に来て、突然、出ていけと言われたそうです。池袋警察署に全部、荷物を運ばれて、後で取りに行ったら、いちいちチェックされて、ごちゃごちゃ言われて返された、という話を夜回りの時に聞きました」

 「私たちが公園緑地課に問い合わせたところ、『すぐに閉鎖はしない。地元の商店街から、都知事も来るような大きなイベントが西口公園であるのにホームレスがいて困る、という苦情が出たので、警察と一緒に行って、荷物をどかせてもらった』、『また近々、イベントがあるので、その時はいったん外に出てもらいたい』と言われました。完全排除ではないというので、いったんは安心しましたが、秋には野外劇場建設のためにフェンスが建てられ、公園から排除されることは目に見えているので、野宿をしている人たちと話し合いをしました」

 NPO法人TENOHASIでは、都内の他団体とともにアパートの空き室を活用した個室シェルターの整備を進めている。清野さんが5人グループに対し、プライバシーの保たれた個室の部屋に入居して、そこで生活保護を申請するという方法があると提案したら、全員、乗り気になったそうだ。

 そこで、個室シェルターの空きが出るたびに順次、入居していただき、今年1月までに5人全員が路上生活から抜け出すことができた。そして現在では、全員が自分名義のアパートに移って、地域で生活をしている。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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