酷暑に加え、最低レベルの水質も懸念材料に
2019年08月23日
ITU(国際トライアスロン連合)副会長の大塚真一郎副会長(日本同連合専務理事)の説明によれば、パラ競技におけるスイム中止の決定は8月17日、「夜明けのミーティング」でなされたという。
東京のお台場を本番会場とするトライアスロンの、20年の東京五輪テストイベントが18日まで行われた。男女エリート、男女各カテゴリーのパラトライアスロン、男女2名ずつ合計4名によるミックスリレー全てが終了したが、17日未明、午前3時半過ぎに、トライアスロンのパラアスリートたちは意外なメールを受信していた。大塚氏が説明をした夜明けのミーティングは、連日定例で実施された「リスクコントロール」のための会議で、運営担当、医師をはじめとするメディカルスタッフ、さらにITUの特別チームとして気象専門スタッフも出席。2つの外的リスクについて検討された。
まずは水質。16日午後に採取したスイムコースの水から基準値の2倍を超えた大腸菌が検出され、水質レベルはITUが定める競技実施のための水質レベル、大変良い、良い、通常、大変汚い、の4段階のうち最低となる「4」と判定された。
このためスイムは中止となり、最初に実施される水泳をランに変え、ランーバイクーランとつなぐ「デュアスロン」の2種目に削減するため、未明に選手に連絡する結果に。水泳に変わりランを2.5㌔とし、バイク20㌔、最終のランを5㌔とするデュアスロンの規定を適用した。
次に気象条件。17日午前の最新気象情報では、気温、湿度、に加え建物や地面、体から出る熱である輻射熱の3つを取り入れた指標WBGT(暑さ指数)がレース終了時には30.5度になると予想されていた。環境省によれば、WBGTはもともとアメリカの海兵隊の訓練中、熱中症になる隊員が増えるリスクを研究した1950年代に算定された指数で、後に米国のスポーツ界はWBGTが28度以上になった場合には10マイル以上の長距離走を禁止するよう決定し、これがスポーツ実施の目安にされてきた。
午前6時半のスタート時点は27.5度だったが、ゴール時の30.5度は危険レベルと判断し、競技を前倒しして対応をはかった。
ITUのマルクシュ・スポーツディレクターによれば、直近の例でも水質の判定によってスイムが中止になった例はイギリス、カザフスタンであったそうだ。一方、これが五輪のテストイベントで起きた事実は重い。来年の同時期に、大腸菌の値の急上昇などをどう食い止めるか、これまでも懸念されてきた「水質」によって、実際に中止種目が出てしまい、改めて「暑さと水」の2つの課題への対応が急がれる。
東京五輪招致の際、「スポーツの力」を英語のスピーチで訴え、招致成功の立役者となった佐藤真海(サントリー)は、パラトライアスロンでの五輪出場を目指している。初めて経験したという「デュアスロン」を終え、スイム中止について「水質の悪化があっては、選手たちの健康に問題が生じる。中止の判断はとてもいいものですし、トライアスロン自体、当日まで何が起きるか分からない。そういう状況に自分も準備をしていかなくてはならないと思う」と、ハプニングも前向きにとらえていた。女子エリートの実施日(15日)は、熱さ指数が32度まで達すると予報され、
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