メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

アンガーマネジメントが虐待防止に役立つ理由

不要な怒りに振り回されず、必要なときには怒りを表現できるようになろう。

田辺有理子 横浜市立大学医学部看護学科講師、日本アンガーマネジメント協会トレーニングプロフェッショナル

「職員のストレスや感情コントロールの問題」

 虐待は施設でも起こるし、在宅でも起こるが、今回は施設のほうに目を向けてみたい。

 2017年度の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果によると、養介護施設従事者などによる高齢者虐待の発生要因としては、「教育・知識・介護技術等に関する問題」が 303件(60.1%)で最も多く、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」が 133件(26.4%)、「倫理観や理念の欠如」が 58件(11.5%)だった(複数回答)。

 この結果については年による大きな差異はなく、この「職員のストレスや感情コントロールの問題」の部分にアンガーマネジメントをぜひ活用してほしいと思っている。アンガーマネジメントの「アンガー(anger)」は「怒り」、すなわちアンガーマネジメントは怒りやイライラといった自身の感情をマネジメントする手法である。

虐待拡大イメージ写真 CGN089/shutterstock.com

アンガーマネジメントが有効な二つの理由

 虐待の防止にアンガーマネジメントを活用してほしい理由を二つ挙げておく。

 まず一つ目は、虐待の要因となる感情コントロール、特に衝動性のコントロールに有効だからだ。

 虐待や不適切ケアが発生するとき、本人は相手に手をあげてはいけないことなど百も承知で、それでもその瞬間、「つい」「カッとなって」「頭が真っ白になって」自分を抑えられないのだ。その1回が取り返しのつかない事態を招くこともあれば、大ごとにならなくても我に返って自分を責めてしまうこともあるだろう。それゆえに、施設における職員向けの虐待防止研修などにおける、介護の知識や技術、あるいは倫理教育を補完するのに活用する価値はあると思う。

 二つ目は、虐待の要因となる職員のストレスへの耐性をつくり、職員間のコミュニケーションを円滑にするために有効だからだ。

 介護の仕事の多くは、組織やチームが協働してケアを提供する体制をとる。特に介護の業界は深刻な人材不足のなか、多様なキャリアのスタッフが採用され、外国人労働者の雇用も始まり、価値観や仕事への姿勢、教育背景など様々なスタッフが協働することになる。もともと対人援助の業種は人間関係などにストレスが高いといわれている。人が集まれば、職員間のいじめやハラスメントが生じ、それが介護ユーザーに向けた暴力や虐待として連鎖していく。そこにアンガーマネジメントが注目されているのである。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

田辺有理子

田辺有理子(たなべ・ ゆりこ) 横浜市立大学医学部看護学科講師、日本アンガーマネジメント協会トレーニングプロフェッショナル

精神看護専門看護師、保健師、精神保健福祉士。 看護師として大学病院勤務を経て、2006年より大学教員として看護教育に携わり、2013年より現職。看護師のメンタルヘルス、虐待防止などに関して、アンガーマネジメントを活用した研修を提供している。イライラをマネジメントして、いきいきと働き続けるためのコツを紹介する。 著書:『イライラとうまく付き合う介護職になる! アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規,2016)ほか。

田辺有理子の記事

もっと見る