メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

怒りの性質から考える高齢者虐待の予防ポイント

「いつの間にか虐待によって支配され、そこから逃れられない」という人いませんか?

田辺有理子 横浜市立大学医学部看護学科講師、日本アンガーマネジメント協会トレーニングプロフェッショナル

怒る前に自分の考え方を伝えてみよう

 施設内の介護場面を例にあげてみよう。

 入浴介助をして、着替えに時間のかかる高齢者がいたとする。職員が手伝えば本人も楽になるし、時間も短縮できて仕事も効率的に進むのに、そばに付き添っているだけで手を貸さずに見ているだけの職員がいる。脱衣所で別の高齢者を介助しながら、その様子をみてイラっとする人がいる。

 別の視点でみてみよう。時間がかかっても自力で着替えようとする意欲は高齢者の日常生活動作の維持に重要で、職員が安易に手伝えば、本人のやる気を削ぎ、自力でできる能力を低下させてしまう。時間がかかっても見守りたいと考えている職員は、すぐに手伝おうとする職員に対してイラっとするかもしれない。

 どちらの考え方も絶対的に正しいとか間違いとか決められるものではない。

アンガーマネジメント3拡大イメージ写真 CGN089/shutterstock.com

 しかし、その場面を見ただけでは、ほかの人がどう考えて行動しているのかまでは読み取れないこともある。介護の現場で働く人は、実に多様なキャリアがある。新卒ですぐに介護の仕事に就く人もいれば、全くの異業種から転職してくる人もいる、年齢も経験も保有する資格も異なれば、考え方が異なるのも自然なことだ。近年では外国人労働者の受け入れも増えてきて、異なる文化背景をもつ人と一緒に働けばなおさらだ。

 自分と異なるやり方をみて、イラっとした、あるいは違和感をもった時に、「なんでそんなやり方をするのか」と言うだけでは、相手のやり方を非難するだけになってしまう。しかし、自分がどんな考え方をもっているのかを簡潔に説明するのは意外に難しい。それは、これまで自分にとっては当たり前で疑問にもつこともなかったからだ。

チームで動いているなら代わってもらうことも一案

 イラっとしたら、なぜ自分はこの出来事に引っかかりがあるのか、それを自分の価値観に照らして考えてみると、自分が大事にしていることを言葉で伝えられるようになる。

 もし、介護について自分の価値観を振り返ってみて、それが「不毛なこだわり」なら手放してしまうのも一案だ。

 例えば、「自分の仕事は責任をもって遂行しなければならない」と考えるのは一見普通だ。しかし、対応していて相手の要望に応えられないこともあるし、ちょっとした行き違いで相手を怒らせてしまうこともある。自分の担当だから自分で対応しなければという考えが強過ぎると、余裕がなくなって高圧的な対応になってしまうかもしれない。それでは、最終的には自分も相手もつらい思いをすることになる。チームで働いているなら、「対応を代わってもらうという選択肢もある」と考えられたら気が楽だ。

 「親の介護は自分がやらなければならない」
 「食事は手作りでなければならない」
 「使った食器はその日のうちに洗わなければならない」

 家族を介護している人にもこのような自分で決めたルールがいろいろあると思う。自分のやり方に固執して完璧を求めると、かえって自分を苦しめることもある。レスパイト・ケアのサービスを利用しても良いし、食事は出来合いの惣菜でも良いし、大変なときは食器を洗うのは翌朝でも良いし誰かに頼んでも良い。自分のルールを少しゆるくしてもきっと大丈夫だ。

アンガーマネジメント3拡大イメージ写真 Cristina Cont/shutterstock.com

 介護職同士の考え方の違い対応する際も、家族が介護保険サービスを受ける際、多様な価値観があることを認め、ほどほどで折り合うという意識に変わると柔軟に対応できるようになれるし、不要なストレスから解放されると思う。

・・・ログインして読む
(残り:約505文字/本文:約3753文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

田辺有理子

田辺有理子(たなべ・ ゆりこ) 横浜市立大学医学部看護学科講師、日本アンガーマネジメント協会トレーニングプロフェッショナル

精神看護専門看護師、保健師、精神保健福祉士。 看護師として大学病院勤務を経て、2006年より大学教員として看護教育に携わり、2013年より現職。看護師のメンタルヘルス、虐待防止などに関して、アンガーマネジメントを活用した研修を提供している。イライラをマネジメントして、いきいきと働き続けるためのコツを紹介する。 著書:『イライラとうまく付き合う介護職になる! アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規,2016)ほか。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

田辺有理子の記事

もっと見る