介護の怒りをやり過ごすテクニック
怒りのピークは数秒。反射的な言動をせずにやり過ごすテクニックを準備しよう。
田辺有理子 横浜市立大学医学部看護学科講師、日本アンガーマネジメント協会トレーニングプロフェッショナル
不適切ケアの裏に介護者の疲れや体調不良があるかも
虐待が発生しやすい介護者の要因として、介護疲れや介護者自身の病気、体調不良などが挙げられている。
介護される側の要因として、身体機能の低下による介護負担の増大、認知症による混乱や周辺症状、コミュニケーションの行き違いなどが、介護者の負担もなる。ほかにも介護の分担や経済面の負担が増えるなど、家族内の関係性が変化することが虐待の引き金になることもある。介護によって家族以外の人間関係が疎遠になり社会的に孤立する場合もある。

イメージ写真 oneinchpunch/shutterstock.com
介護が長期化していくにつれ介護者側の気持ちに余裕がなくなってくると、ささいなことにもイライラしやすくなる。ずっとイライラして、不適切なケアが続くと、いつしかそれが当たり前になってしまうのも危険だ。いけないと思ってもイライラすれば手荒な対応になったり、ネグレクト(介護放棄)しそうになったり、いけないことをしたと自分を責めて、それが介護者自身を追い詰めてしまう。
介護者自身が、疲れがたまってきた、気持ちに余裕がなくなってきた、怒りっぽくなっている、などと自分の状態をモニタリングしていくことも大事だ。必要に応じて、リフレッシュする、休息をとる、誰かに相談するなどの対処をとるようにする。限界に達してからでは、気づいたときには自分で対処することができなくなっている。
心身の健康を崩してしまう前に、対応することが重要だ。イライラしがちだと自覚したときの対応も事前に準備しておくと活用しやすくなる。
介護から解放される時間をつくる
介護職が休暇をとって、数日間仕事から離れることができるように、家族が介護に疲れたら、家族にも休息が必要だ。デイサービスやショートステイなどの積極的な活用が推奨される。デイサービスやショートステイは、要介護者のためのサービスであるだけでなく、介護者の負担を軽減するためのレスパイトケアのサービスでもある。冠婚葬祭や仕事の出張、介護者自身の通院などだけでなく、介護者自身の休養や旅行など介護者のレスパイトのために活用できるサービスだ。
ほかにも、友人と外食する、買い物に出かけるなど、短い時間でも気分転換できることもある。家を空けることができない状況だとしても、おいしいコーヒーをいれて一息つく、入浴の際に香りの良い入浴剤を使ってみるなど、がんばっている自分へのちょっとしたご褒美を作っておくという方法もあるだろう。なかには、掃除や料理などの家事に集中することが気分転換になるという人もいる。日ごろからやっていることのなかで、自分がリラックスできると感じられるものを意識してみると、何か思い浮かぶものがあるのではないだろうか。こうしなければならないと決まったものはないから、自分にあっているやり方を探してみると良いと思う。
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