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千葉の小児科医が台風15号と大停電から考えた事

政治・報道の初動の遅れにいら立ち。人々の関心を呼び覚ますメディア報道こそ

松永正訓 小児外科医・作家

3カ所で倒木、信号停電も3カ所

 いつものように車に乗ってクリニックへ出かけると、途中で3カ所倒木がありました。幸い2車線だったために通行は可能でしたが、こんな被害は見た経験がありません。また信号の停電も3カ所ありました。

 そのうちの1カ所は、かなり交通量の激しい交差点です。私はたまたま流れに乗って交差点を難なく渡りましたが、これは大変なことになると直感しました。

拡大月明かりのなか、停電で営業を取りやめたコンビニエンスストア=2019年9月10日午後8時7分
 クリニックは診療時間になっても患者はポツリポツリと来院するだけの状態です。お母さんに聞いてみると、クリニック近くの大きな交差点2カ所が停電し、大渋滞になっているとのことです。また、クリニックと同じ町内の広い地域で大規模停電が発生していることも聞きました。

 私のクリニックは生け垣の中の2メートルほどの樹木が大きく傾いたくらいで、深刻な被害はありませんでしたが、スタッフの中の1人の自宅は停電になっていました。千葉市でこれだけのダメージなのですから、房総半島南部は相当ひどいことになっているはずだと容易に想像がつきました。

メディアの報道に強い違和感

拡大停電で信号がつかず、手信号で通行者を誘導する警察官=2019年9月11日午後6時33分、千葉市緑区
 ところが、ニュースが入ってきません。9日(月)の夜のニュースは、電車の計画運休が予定よりも再開が遅れているというものばかりです。テレビでは、千葉県で停電が起きていると簡単に触れられているだけでした。朝日新聞の9日(月)夕刊でも、「64万軒が停電になった」と1行報じられたのみです。

 10日(火)の朝にテレビニュースを見ると、隣国の法務大臣候補の政治家のスキャンダルについて特集を組んでいます。いや、いくら何でもこれは優先順位が違うのではと私は思いました。同日の朝日新聞朝刊も、①計画運休の再開が遅れていること、②成田空港で足止めになっている人が多数いること、③市原市でゴルフ練習場の鉄柱が倒壊し住宅が損壊したこと、が主に報じられています。停電については、全面復旧は11日以降、と小さく書かれていました。

 房総半島南部は緑濃い森林地帯です。こうした場所で大量の倒木があれば、電力の供給ルートに深刻なダメージがあることは、すぐに分かることです。家屋の損害も報道以上にもっと多いはずだし、電力の回復はそんなに容易ではないはずだと、私は報道の内容に強い違和感を感じました。

 また、この災害に対して、県はどう動いているのだろうかと強い疑問を持ちました。単に私の情報収集力が乏しいだけかもしれませんが、政治も報道も初動が遅れているといら立ちを覚えました。

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筆者

松永正訓

松永正訓(まつなが・ただし) 小児外科医・作家

1961年、東京都生まれ。1987年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会より会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長。 『運命の子 トリソミー』(小学館)にて2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。 『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)にて2019年、第8回日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞。 最近の著書に『いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき』(中央公論新社)、『小児科医が伝える オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)、『発達障害 最初の一歩』(中央公論新社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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