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羽生結弦、4アクセル、5回転ジャンプへの挑戦

シニアに上がって10年目。「引退しないですからね、まだ!」

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 9月14日、カナダのトロント郊外オークビルで開催されたオータムクラシックで、例年通りシーズン初戦を終えた羽生結弦。

 予想通り、余裕で優勝したものの、演技の内容は本人が望んでいたものではなかった。特に予想外だったのは、SPの4サルコウで尻餅をついたことである。

 もともと練習での調子を見た上で、4ルッツから難易度を落として跳んだ4サルコウだった。回転軸が細く、体幹が人並み外れて強い羽生にとって、着氷が乱れることはあっても尻餅をつくジャンプミスはとても珍しい。

 「世界選手権の失敗をちょっと引きずっているかなと思う。気合も入っていたんですけど、ちょっと(対策を)考えないとな、とは思います」

 演技後、羽生はそう口にして3月の埼玉世界選手権での同じ失敗が心のどこかによぎっていたことを告白した。それに技術的な解説を加えたのは、カナダ・トロントの練習拠点「クリケットクラブ」のジャンプコーチである、ジスラン・ブリアンである。

 「ジャンプに入る軌道が内側に入りすぎて、回り過ぎた。いっそのこと5回転をやれば良かったのに、と思いました」

 そうジョークめかして言ったのは、まるっきりの絵空事ではない。

すでに5回転ジャンプの練習に取り組んでいる羽生結弦拡大すでに5回転ジャンプの練習に取り組んでいることを明かした羽生結弦

4アクセルのために5回転の練習を

 羽生はこの大会の事前会見で、クリケットクラブで5回転サルコウを試していたことを告白したのだ。足が引っかかり左足首を負傷してしまったという。

 「(4回転半)アクセルを練習するために、もっと回転力を上げたいと思って5回転を練習していて。それでやっちゃったんですけど。右足ほどではないんですけど、痛み止めを飲んで練習している期間はちょっとありました」

 幸い怪我の程度は現在は影響ないという。大会に向けての調整のために3週間前から4アクセルも5回転ジャンプも練習を一時中断しているところだ。

 5回転は着氷できたのかと聞かれると、

 「いやいや。アクセルも降りられてないのに……。降りれないです。そんな簡単に」と苦笑いを見せた。

 5回転ジャンプといえば、その実現の可能性はこれまで何度か取り沙汰されてきたことはある。1998年長野オリンピック銀メダリストのエルビス・ストイコ(カナダ)が、現役当時、何度か練習で試してみたことを告白している。さらに宇野昌磨は、今年の春に5回転ジャンプへの挑戦意欲を口にした。

 だが当然ながら、まだ試合で誰も試したことはない。ところが前述のブリアンコーチは、補助用具のハーネスを使用し、ワイヤーでサポートされた状態ながら羽生がきれいな5回転トウループを降りたことを告白した。

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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

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